今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何かについて考察するブログ

広野町をどんどん北へ。津波が押し寄せた町の跡は鳥であふれていた。福島浜通り彷徨編③

前:上野からいわきへへ行くには鈍行列車で3時間30分もかかります。エコノミー症候群に気を付けてください。 - 今夜はいやほい

 

いわき駅に到着したわれわれは空腹を満たすため、昼食をとることにした。駅を出るといいかんじにひなびたみふみ屋という名の肉屋兼とんかつ屋を発見した。肉屋の肉は新鮮、新鮮な肉はうまい、うまい肉のとんかつはうまいという、厳密な三段論法に基づき、店へと突入することを決めた。

 

論理的推論は極めてただしく、かりかりの香ばしいパン粉に包まれたジューシーな肉のとんかつは基本に忠実なおいしさがあった。

 

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みふみ屋は地元の人たちからよく愛されている雰囲気があった。、なんとかかんとかだべえというこてこての方言をあやつる福島の男たちが店に集まってきては、何かを楽しそうにかたらいながらガツガツととんかつをたべていた。愛すべき店のある人生というのはよいものだ。長いこと油がしみ込んだのであろう店からは何事にも代えがたい生活の匂いがした。

 

昼食を済ませて、レンタカーに乗り込んだ。トヨタカローラであった。

 

「どくにいくんだい?」加藤はハンドルを握った。

 

浪江町を歩きたいですね」オネットは後方から指示を出した。

 

じゃあ、そうしようと先輩がカーナビに行き先を入力しようとすると、加藤が行き方わかるんで大丈夫ですと軽やかににアクセルを踏んだ。加藤はなにかと軽快な男であった。

 

いわきを抜け、広野町に入った。山肌いがいなにも見えない大通りを走っていてもつまらないので、海岸沿いを走りましょうかと加藤は交差点を右に曲がった。

 

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「この辺はアイアイっていう地元密着型のいいスーパーがあったんですけど、地震で店じまいしちゃったんですよね」ありとあらゆる地域に精通している男、加藤は広野町についてもなにかとよく知っているようであった。

 

「で、結局営業してるのが、イオンなんです。社会的使命の元、採算度外視で、こうしてイオンが出店してきていて、イオンはよく地域の景色を消していると批判されたりもしていて、それはそれで正しいのですが、こういうことができるのはやっぱり、大資本だったりもするんですよね」

 

たしかに、福島にはイオンがたくさんあった。小名浜にも震災復興事業として、巨大イオンモールが誘致されるようである。イオンはその圧倒的無機物性によって、またたくまに、景色を均質な空間へと変えていく強大な力をひめている。復興にイオンがかんでくることに対しては、毀誉褒貶いろいろなことがあるのかもしれない。しかし、均質であるからこそ、おおくの人々をうけいれることができているというのも、また事実なのだろう。

 

 また、しばらく走った。いい天気だった。車はなにもない荒れ地までやってきた。

 

「この辺は津波の被害が大きかったところですね」

 

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昔から何もなかったかのような荒れ地が広がっていた。かつて人々の生活がここにあったのだと言われても、ちょっと信じられないくらいに、町の痕跡すらほとんど残っていなかった。野に生えた雑草だけがたくましく風に吹かれていた。ただただ無常観があった。

 

「ちょっと降りて歩こうよ」僕は加藤に告げた。

 

いいですよと言って加藤は道のわきに 車を停めた。

 

「なにもないですね」僕はただただ唖然とした。

 

「そうだな、これは本当になにもないな」先輩も驚いていた。

 

近くで工事をしているらしいトラックがゆっくりと通り過ぎていった。運転手は人がいるのか珍しいなといった調子でしげしげとこちらを見ていた。

 

「そうなんですよね、瓦礫もほとんどすべて撤去されてしまって何も残ってないんですよね」加藤は腕を組んでぼーっと原野を眺めていた。

 

「やっぱり、実際に来てみると違いますね」オネットも驚いた様子だった。

 

3月になれば、ぼくたちは、毎年テレビでこんな風景を目にしているのだろう。しかし、360度何もない荒れ地にこうして立っていると、やっぱり画面越しとは違い(あたりまえだけど)、何もないこと自体が圧倒的自然の力としてぐんぐん押し迫ってくるのだ。

 

ぼくたちはしばし無言になり黙々と歩いた。

 

唯一とりこわされずに残っていた民家があった。1階部分の骨組みがむき出しのままになっていた。

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とりこわされずに残っていた集会所

 

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根元から折れた石碑

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生き残ったらしい木

 

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 建設中の防波堤。

 

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広野町からまた少し北へ進むと、鳥たちが群れを成して水浴びをしていた。 何匹かの白鳥は驚くほど太っていた。人がいなくなった土地では、動物たちが野生を取り戻しはじめているようだった。日本というのは地震の国だ。何千年というスパンでいえば、災害後にこうした風景がたびたび繰り返されてきたのかもしれないなと思うとすこし不思議な気分だった。

 

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なんてわがもの顔で水につかる鳥たちだろうと思ったけど、よく考えれば、地平をコンクリートで固めまくって、家なんか建ててすんじゃったりする人間もやはり鳥から見たら、おどろきの存在にちがいない

 

いやしかし、わがもの顔の鳥たちだ。

 

つづく(かもしれない)