今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

寝る前に読む短歌の効用ー現代短歌に入門する

 最近、短歌を読んでいる。寝る前にときどきぱらぱらと。

  

早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素晴しき人生を得よ (葛原妙子)

 

なんで、短歌に興味を持ち始めたのかというのをぐぐぐっとさかのぼっていくと、去年の夏ころに、歌人の伊波真人さんに会ったからだ。ツイッターでフォローしていて、音楽の趣味が似ているので、飲みに行きましょうという話になった。飲みましょうと言いながら、店も特に決めてもいなかったので、池袋で待ち合わせをして、ぶらぶらと街をあるいて、居酒屋に入るでもなくカレー屋に入った。

 

地下にある薄暗い店内は人でごった返していた。カレーを食べながら、伊波さんは「今度、短歌の本を出すんですよ」と言った。

 

おお、短歌の本か。短歌ってあんまり読んだことないなあと思いながら、出版されたら買いますね!と約束して、解散した。

 

そのあと、友人に、伊波さんという人と会ったんだよね、という話をすると、その友人は実は短歌が好きだったらしく「短歌いいよね!伊波さんは短歌界隈では有名な人だよ」と教えてくれた。友人は、短歌初心者の僕にアンソロジーを貸してくれた。

 

それから少したって、季節が切り替わったころ、伊波さんの歌集「ナイトフライト」発売された。

 

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表紙が永井博で、帯が堀込高樹という、ある種のひとびとに直撃する装丁をしていた。ある種のひとびとであるところの僕も本屋で手に取ってにやにやしてしまった。

 

ナイトフライト (現代歌人シリーズ19)

ナイトフライト (現代歌人シリーズ19)

 

 

読んでいくと、これはすごくすきな感じだ……と思った。

 

「川辺にも星座表にも来る春をはぐれて僕は風を見ている」

 

かっこいい…!呼んだ瞬間にイメージが頭の中でぱっとはじけて、映画の物憂げなシーンを見たときのような体の感覚が生じた。スピッツの歌詞を読んだ時のようなそんな感じがした。

 

「星じゅうで新聞ひらく音がする東の空が明けていくころ」

 

鳥瞰という言葉があるけれど、高いところから街を見下ろしているような感覚がぱーっと広がっていくような気がする。

 

じっくり短歌を読んだのがほとんど初めてだった。31字でこんなにも広がりのある感覚を生み出すすことができるのかと感心した。ベローチェで熱心に歌集を読んだ。

 

「海岸に借りた車を停まらせてポップソングになれない僕ら」

 

コーヒーゼリーで舌を冷やしながら、そうだなあ、僕たちの生活はできそこないのポップソングみたいなものだなあとおもってすこし笑ってしまった。それにしてもベローチェコーヒーゼリーはとてもおいしい。アイスとコーヒーのコントラストが完璧な比率なのである。

 

歌集を通読してみて、短歌というのは、そうであることが必然であるかのような、そうでしかありえなかったような言葉のまとまりになっているのだなと感心した。一首、一首が巧妙に配置されていて、一冊の歌集を読みおえると、小説とは少し違った充足感がある。なんともうまく言えないのだけれど。

 

友人から借りた短歌のアンソロジーにも好きなものがたくさんあった。 こうやって書き出してみると、物騒な短歌が好きなのかもしれない。

 

3人で傘もささずに歩いてる いつかばらけることを知ってる(加藤千恵

 

特別な瞬間というのは、なぜだか特別であるがゆえに終わりのことをやたらと意識してしまったりするものだ。ツイッターで「この短歌めっちゃすきだわ……」とつぶやいたら、フォロワーに人に『ハッピー☆アイスクリーム』という歌集を進められたので読んでみた。この世界には意外と短歌好きな人がたくさんいるらしい。

 

これもとてもよかった。当時、女子高生だった著者の短歌がのっている。若者の実存的な不安と、若さゆえの漠然とした自由が同居していて、むむ、なるほど、なるほど…スバラシイ…といったかんじだ。

 

重要と書かれた文字を写していくなぜ重要かわからないまま(加藤千恵

 

青春の終わった街でなぜでしょう言葉は燃えないゴミだったのに(加藤千恵

 

 

 

秋茄子を両手に乗せて光らせてどうして死ぬんだろう僕たちは(堂園昌彦)

 

純文学の珠玉のシーンを切り抜いてきたような一首。

 

日々は泡 記憶はなつかしい炉にくべる薪 愛はたくさんの火(井上法子)

 

頭の中で像を結ぶことがむずかしい表現だけど、びしっとつたわってくる。日々は泡だし、愛はたくさんの火のようなきがする。

 

偶像の破壊のあとの空洞がたぶん僕らの偶像だろう(松木秀)

 

タリバンの仏像爆破事件のあとに読まれた短歌らしい。空洞がぼくらの偶像なのだ。音の良さもさることながら、社会性もありつつ、ひとびとの虚無感もうたいこまれていて、ほんとにすごい。

 

さんさんと夜の光のコンビニにいると死なないような気がする(松木秀)

 

コンビニの前で、ぼーっとしていると、自分もじんこうぶつのような気がしてくるのでとてもわかる。わかる大賞。

 

好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ(東直子

 

最後の東直子さんの短歌は、なんでなのかはわからないけれど、恐ろしいほどに完璧な気がした。夕暮れにそまる真っ赤な湖をカヌーが揺蕩うている、好きだった世界をのせて。うつくしき、終末的世界観!すごい!

 

ということで最近は短歌をちょこちょこ読んでいた。

 

空き時間とかにぱっと読めるし、とてもおもしろい!いろいろ読んでみたい。

 

ちなみに読んでたアンソロジーは主にこれ

桜前線開架宣言

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