今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

徒然なるコロナ方丈記、路上の野良トイレットペーパー売り

ここ最近自宅勤務で、家に籠っている。4月の後半は出社しなくてはならないので、感染増加のピークっぽいタイミングでまたあの満員電車に突入するのかと思うと、困ったな……という感じである。

 

夜はとくに暇を持て余すので、酒でも飲むかと、毎日なにかのアルコールを飲んでいる。最近は、冷凍庫で安いジンがトロトロになっているので、炭酸飲料で割って、ジントニック風の飲み物を錬成し飲んでいる。いろいろ自分で組み合わせてみるのは楽しいことである。

 

一応、だれだら長時間飲むというのもあれなので、酒を飲むときは21時以降だけにしようと試みている。たまに友人から電話がきたり、電話をしたりしている。

 

f:id:kikuchidesu:20200410143031j:plain

 

時々スーパーに買いものに行く。3月末に、家の前に、野良トイレットペーパー売りが出現した。潰れかけの木造民家の前で、眠たげな腰の少し曲がった老人が業務用トイレットペーパーなるものを売りさばいているのである。いや、売り捌いているというと少し違うのかもしれない。正確に言えば、トイレットペーパーを前にして、特に動くこともなくじっと座っているのである。なんとも奇妙な光景である。なんだか戦後的光景だなと思った。老人とトイレットペーパーの醸す闇市感がすごいのである。

 

業務用というのは、なんでも長さが通常のトイレットペーパーの倍であるらしく、黒のマッキーで不器用に書かれた価格表にそんなような売り文句が載っている。道ゆく人が怪しげな視線を老人に送っていて、老人は気にも止めずぼーっと座っている。

 

大正時代に路上でバナナ売り始まったというが、令和の時代は、路上トイレットペーパー売りが行われているのである。大正時代の人々に、100年後には、トイレットペーパーが路上で売られていると告げたら、なんと思うだろう。

 

先週あたりから、野良トイレットペーパー売りの老人もいなくなってしまった。全部売れてしまったのだろうか。緊急事態宣言を受けて自粛したのだろうか。雰囲気的に言えば、あの老人は緊急事態宣言などあまり気にしないようなタイプに見えた。

 

スーパーまでの道に、今度はなんと野良マスク売りがいた。こちらは40代くらいの女性で、一枚300円で手作りと思われる布のマスクを売り捌いていた。一枚300円か…… 社会の急激な変化の隙間で、こうした興業がおこなわれているのは興味深いことである。

 

社会は変わっても月は何事もない様子である。

 

f:id:kikuchidesu:20200410143531j:plain

 

友人がくれた本を読む。山に囲まれた秘境駅のそばに住んでいた両足を失ったアイヌの漁師の話からはじまる。多層的な北海道のイメージが浮かび上がってくる。一気に引き込まれて200ページくらい読む。北海道は本当に興味を引かれる場所である。早く北海道に行ける日が来ることを祈りつつページをめくる。800ページほどあるので先は長い。

 

失業中の友人からLINEがくる

 

「僕だけが失業状態であるよりは、みんなが失業状態である方が辛くないのだ」

 

f:id:kikuchidesu:20200410144453j:plain

 

公共料金を払いにコンビニへ行く。レジカウンターには天井から厚手のビニールの幕が垂れており、レジのテーブルの上10センチのみがあいていて、そこでお金や商品の受け渡しをするようになってた。なんだか、こんな感じでお金のやりとりをすると、反社会的な取引をしているかのような気分になる。

 

帰りに公園を抜けていこうとすると、本格的に腰の曲がった老女が花壇に向かってぶつぶつと何かを囁いていた。耳をすますと「ええ、私は、新宿に住んでおりましてね、ええ、ええ。老人は暇だから、こうして、花壇の手入れをしておるんですよ、ええ、ええ」とひとりごちていた。なるほど、毎年きれいに咲いている公園のパンジーは、腰曲がりの老女によってメンテナンスされていたのだなと知る。

 

「今年は、桜も見えなくて残念でね」と老女はパンジーに向かって言った。老女の上には立派な桜の木が生えていた。徐々に青葉が芽吹きはじめ、葉桜に変わっていくところだった。

 

f:id:kikuchidesu:20200410142953j:plain

 

緩い風の中、桜の花弁がゆっくりと散りおちていた。老女にとっての桜が見えるとはいったいなんだったのだろうかと考えながら家に帰った。