これのつづき
無事、宿の前で友人二人と合流する。寒いけれどさわやかなよい天気であった。友人二人は深夜一時の便で羽田を発つはずが、ピーチアビエーションが出発時間を2時間遅らせるという最悪の順延を行い、3時に飛行機に乗り、あまりよく眠れなかったらしくそこそこ疲れたような顔で現れた。私はといえばベットで気持ちよく眠り、最高のコンディションで2日目の朝を迎えていた。一人で一日早く来て完全に正解だったといえる。
今回、一緒に旅行に行った友人一人は中西と言って、極度の学歴主義者であった。どれくらい学歴主義者かといえば、受験に失敗して、早慶以下の大学に行くくらいなら自殺するといって名古屋駅で投身自殺するべく3時間ホームにたっていたなどという逸話があるような男である。彼たっての希望で、韓国の東大であるところのソウル大学を訪れることになった。
大学に行くと結構楽しいものである。お金がかかった建築物というのはなかなか見ごたえがあるものだ。同支社大学とか北海道大学なんてすばらしいキャンパスで観光地としてなかなか優れている。まあソウル大学も韓国最高峰の大学なわけだし、さぞかし立派に違いないという予想の元バスを乗り継いでキャンパスへとむかった。
どんどんと、中心地から離れていき山が多くなっていく。ソウル大学は意外なことにソウルの中でもけっこう田舎なところにあった。これがソウル大学の門である。
微妙だ…何とも言い難い。かっこいいわけでもネタにできるほどダサいわけでもない。旅行をする際に最も最悪なパターンのやつである。
そう。ソウル大学は何とも言えない微妙なかんじだったのだ。山に囲まれ、ただっぴろい敷地に無機質な建物がポコポコ立っているだけである。東大のような荘厳さを期待して行ったにもかかわらず、完全に肩透かしを食らってしまった。完全にミスったなという雰囲気が流れる。中を見て回るでもなく早々にソウル大学を後にした。
行く場所を一つも決めることなく、思いついたところに行こうというノリだったので、次はサムスンの本社を見に行くことになった。再びバスに乗り込む。ソウルはバスがありとあらゆるところに張り巡らされている。海外でバスに乗るというのはなかなか勇気がいる行為だったりするが、我々には最強のツアーコンダクターがいた。二人目の友人加藤である。
彼は韓国が大好きであるらしく、すでにソウルは14回くらい言ったことがあるらしい。ソウルにあるマンホール見てまわるためだけに3週間ソウルに滞在していたこともあるともはや本当なのか嘘なのかもよくわからないことを言っていた。日本の統治時代の行政区分の京城という文字が入っているマンホールがそこの高架橋の下のところにあるんですよ!と目をきらめかせながら語っていた。いうまでもないことだが、彼は本当に変わったやつなのだ。
韓国のマンホールについてまとめられているサイトを発見した。
http://sky.geocities.jp/usagigasi1u/gaikoku/kannkoku/kannkoku.html
韓国のマンホールというのはある種の人々には熱いなにかなのだろうか…
サムスン本社に到着する。
これが日本の家電メーカーを市場から華麗に駆逐していっているサムソン… 愛国心に火が付くわ…なんてことは特におこらずに展示スペースを楽しく見学した。
おしゃれだ。
いろいろな製品が展示されている。中でもスマートウォッチがなかなか面白かった。ふちをくるくる回すと画面が切り替わるのだ。写真の左上に移っているやつである。この湾曲しているテレビも画面に吸い込まれていきそうで最先端はこんなことになっているのかと驚かされた。
こりゃ日本企業は勝てんわと中西がつぶやいていた。家電メーカーは盛衰の移り変わりがはげしいので今後どうなるのかはわからないけれど、やはりサムスンはすごい会社なんだろうなあと小学生のような感想が浮かんできた。思い返せばここまでの旅行は韓国の小学生の社会科見学のようである。そこそこサムスン本社を満喫し、再びバスに。
韓国のバスはとにかく運転が荒い。棒につかまっていないと倒れそうになる。
「韓国の運転はまだ途上国だなあ」
「バスがまだ止まり切っていないのに、ドアが開くなんて安全への意識が低すぎる」
「ドアが閉まるのが早すぎるんだよ。降りれないじゃないか」
などなど中西から次々と愚痴がこぼれる。私と加藤は普通に降りれるのに、中西はバスから降りるたびにドアに挟まれそうになっていた。自分が不器用という意識はかけらもないらしく、挟まれそうになるたびに、バスに対する批判を行っていた。うるさ型に人間は近くにいると疲れるなあと思う。
昼飯を食べようと話になりバスを途中下車する。韓国に来たわけだしカルビを食べようという話になる。加藤一押しの焼き肉店に行く。
ソソモンヌンカルビチッ。すごい名前だ。カルビチッ!!!よくわからないけれどとにかくうまいに違いない。語感がこの店はうまいと言っている。店の前にはすでに10人ほどが並んでいる。半数は日本人であった。有名な店なのだろうか。ドラム缶の上で肉を焼いてたって食べるという変わったスタイルだ。
みなさんせっせと肉を食べている。
これがなかなかうまい。韓国はおばちゃんが焼いてくれるのをはたで見ているのが定番スタイルらしく、髪をくるくるにまいた大阪にいそうなおばちゃんがじょきじょきと肉を切ってくれた。韓国の飲食店にはだいたいこのタイプのおばちゃんが駐在している。
肉もうまいのだが、何がいいって、ソジュがうまいということである。ソジュは韓国の焼酎であまくてとてものみやすい。そしてなにより韓国料理に合うのだ。
寝不足と韓国のバスによって不機嫌さが増してきていた中西も機嫌がよくなったようだった。肉は正義である。ここらへんはラブホだらけだねという話題になると、中西は語り始めた。
「韓国というのはむかし外出禁止令があって、そのせいで安く泊まれるラブホテルがたくさん作られるようになったんだよ」
彼は変なことをやたらと知っている。どこでその知識を得てきたのだろうか…
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