今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

ダクトと配線の路地にあるソウルの喫茶店、珈琲韓薬房。アジアの雰囲気。

珈琲韓薬房・커피한약방(コーヒーハニャクバン)

 

珈琲韓薬房はソウルの中心地の乙支路という街区にある。ダクトや謎の配線が垂れている、人ひとり分くらいの細い細い通りにある。まさに正しく路地である。こんなアジア的風景を僕は求めていました!!

  

f:id:kikuchidesu:20191110225500j:plain

 

僕は喫茶店が好きだ。それは以下のような二つの理由に起因している。一つ目は歩行能力に脆弱性があり、歩いているとすぐに疲れてしまうということだ。本当にびっくりするくらい一瞬で疲れてしまう。旅行に行けば数万歩歩くことはざらだが、僕の場合は、たかだか一万歩程度でも腰の構成要因である骨および節の悲鳴が聞こえるようになる。姿勢が悪いのが原因なのだと思う。とにかくすぐ座りたくなってしまうのだ。

 

茶店が好きな理由の二つ目は、珈琲が好きだから、ではなく甘いものが好きだからである。珈琲も飲めばおいしいなと思うのだけれど、やはりどちらかといえば甘いもののほうが好きだ。甘いものを食べれば、コーヒーも飲みたくなるのでどちらも車輪のようなものといえばそうなのだけど、真の目的はというと、コーヒーゼリーとかパフェとか、あるいは、アイス、プリンなどなど、そういったタイプの喫茶店的甘味物なのである。

 

f:id:kikuchidesu:20191110231800j:plain

 

入り口はレトロの極みのような雰囲気だ。全体的に少し暗い。塗装のハゲ具合や窓の枠の模様が洒落ている。どうも60年代に建てられたビルをリノベーション的な感じで再利用した喫茶店らしい。らしい、というのは、ググってみたものの日本語ではあまり詳しい情報がなく、ハングルを英語に変換して色々記事を読んだりしていたので、そもそも正しく情報を得られているのか不明なのである……

 

カウンターは韓国の伝統的なたんすが用いられているらしい。かなり立派な装飾が施されている。

 

f:id:kikuchidesu:20191110232125j:plain

 

華やかで美しい。

 

f:id:kikuchidesu:20191110232756j:plain

 

かなり古い建物で、そこかしこに色濃いアジアの雰囲気がある。韓国の若者たちが各々話に花を咲かせており、ゆったりとした時間が漂っている。ふと、昔見た恋する惑星という映画を思い出した。これはまさに王家衛の世界だ……と僕はにわかに興奮した。

  

f:id:kikuchidesu:20191110232903j:plain

  

どうやら、昔、この地に病院があったらしい。またもや”らしい”である。ハングルが読めないので仕方がない。店内には古い器具が色々置いてある。

 

f:id:kikuchidesu:20191110234543j:plain

 

ソウルの若者たちに混じりオーダーをする。どれにしよう…と彼女と話していると、店員さんが日本語のメニューをくれた。韓国は日本語メニューを置いている店が多くてありがたい。アフォガードとカフェラテを頼んだ。

 

f:id:kikuchidesu:20191110233644j:plain

 

店内はレコードがかかっている。王家衛の映画に出てくる若者のような感じで振舞わなければ!などとちょっとだるそうなスカした感じで歩いてみる。

 

珈琲韓薬房は道を挟んで二店舗あり、片方は珈琲屋で片方はケーキ屋になっている。どっちで購入したかはあまり関係なく両店舗の席を使えるようだったのでケーキ屋の側の3階に座ることにした。

 

階段を上がっていく。

f:id:kikuchidesu:20191111195506j:plain

 

ライトもなんだか美しくも禍々しい。 

 

f:id:kikuchidesu:20191111195525j:plain

 

 

 

f:id:kikuchidesu:20191110235441j:plain

 

3階はあまり人がおらずとても静かだった。30代の夫婦と思われる人たちがコーヒーを飲んでいたやはりよいアジアの雰囲気、王家衛性があった。荒ぶれた若者がなんか机に足を投げ出して、気だるそうにタバコを燻らせたりしていそうじゃないか!ソウルにこんな良い喫茶店があるとは……

 

「うわ、魚じゃん!」

 

彼女は声のトーンをあげた。彼女は無類の魚好きであった。

 

「めちゃくちゃ白いね。なんて魚なんだろうね」

 

暗い喫茶店に白い魚はやたらと鮮やかに見えた。白い魚はゆっさゆっさと水槽の中を泳いでいた。その悠然たる態度は時間を忘れさせるものだった。

 

f:id:kikuchidesu:20191111195425j:plain

 

バニラアイスに珈琲をかける。甘いものに苦味を足したくなるのは人間という存在の必然である。

 

f:id:kikuchidesu:20191111193936j:plain

 

「むむ、この魚はヒゲが3本生えているな。しかも一本が別れるようにして生えている……なるほどなるほど…あ、ふんした」

 

彼女は水槽をつぶさに観察していた。ぼくはアフォガードを黙々と食べた。

 

f:id:kikuchidesu:20191111194147j:plain

 

「この喫茶店、かなりよくない?韓国の喫茶店って可愛らしい感じのばかりだからこういうのめずらしいよね」

 

「いやあ、いい喫茶店だわ。そこらじゅうの意匠がすべていい」と彼女は白い魚を見つめながら答えた。

 

王家衛っていう映画監督がいてさ」

 

「うんうん」

 

「なんか、こんな感じの喫茶店が出てきそうな映画をとっているんだよ」

 

「へ〜」

 

「お、その窓もいいね……」

 

窓を開けると路地が見下ろせた。喧騒を遠く感じた。心地よい夜風が吹いていた。

f:id:kikuchidesu:20191111195146j:plain

 

旅行先の喫茶店の心地よさというのは、匿名性の心地よさだ。まったく誰も自分のことを知らない街で茶をしばきながら人の流れを見やったりする。あらゆるところで自分という存在に全く何も関係することなく、無数の人々の生活が過ぎていくのだなあ…当たり前のことなのだけど。

 

ソジュの瓶に活けられた花。

f:id:kikuchidesu:20191111200104j:plain

 

せっかくなので他の階も見て回る。

 

2階

f:id:kikuchidesu:20191111200232j:plain

 

パイプオルガンが置いてある。

 

f:id:kikuchidesu:20191111200253j:plain

 

ググっていたら、この階の床の模様は日本統治時代によく使われた模様なのではないかと書いてあるブログなどもあった。

 

f:id:kikuchidesu:20191111200313j:plain

 

向かいの建物の2階。虎が威嚇している。

 

f:id:kikuchidesu:20191111200437j:plain

 

テラス席もあった。11月は外で飲むのも気持ち良い季節だなあと思った。

 

f:id:kikuchidesu:20191111200506j:plain

 

好みの喫茶店があると、街が自分に近いものになってくる気がする。とりあえず疲れたらあそこ行くかとかそういう気を持てるというのは存外大きなことだと思う。ソウル訪れる機会があれば、また珈琲韓薬房に来たいなと思った。