今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

ハンガリーのフルーツ蒸留酒パーリンカを飲むやいなや幸せになる。神楽坂−Bar Pálinka

半年ほど前、神楽坂を散歩していたら、Bar Pálinkaと書かれたドアを見つけた。こんなところにバーがあったんだなと、ググってみたら2020年開店のハンガリー蒸留酒をメインに取り扱うバーであるらしいことが分かった。ハンガリー蒸留酒を専門的に扱うバーは国内には他にないらしく、そしてその蒸留酒の名前がまさにパーリンかであるらしい。

 

つまり、パーリンカなる酒を飲むなら基本的には、ここしかないということなのだ。興味深いではないかということで、行ってみることにした。

 

はじめてのバーの扉を開ける時というのは緊張するものである。扉の向こうにはマスター以外だれもいないかもしれないし、もしかすると、満席で入れないのかもしれない。マスターの人柄だってわからない。恐る恐る、真っ黒の扉を開くと、溌剌としたマスターがにこやかに迎えてくれた。バーに行って、マスターが年下なことはあまりなかったのだけれど、マスターはかなり若そうであった。話を聞いていたら、2〜3歳マスターの方が若いようだった。同世代だ、もう店を持っているのだ、すごいなあと思いながら席に着く。

 

今までまったく見たことのない酒ばかり。

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全然わからないので、おすすめのやつを、おすすめの飲み方でくださいという丸投げの方法で注文すると、パーリンカというのは、甘味が入っているわけではないので、初めて飲むなら、トニックで割ると飲みやすくていいと思いますと言って、MAGNA PALINKA というアプリコットパーリンカを出してくれた(たしかアプリコットだった気がするのだが、行ったのが三ヶ月近く前なので、記憶が曖昧である)

 

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ジントニックならぬ、パーリンカトニックを飲むと、果物の良い香りが炭酸とともに口の中でぱーとひらく。しゅわしゅわと弾ける泡に果物の善良な部分がつめこまれているかのようだ。彦摩呂的にいえば、口の中がお花畑状態である。飲み口はドライな感じで、飲んだ後もとてもさっぱりしている。トニックの甘さとの相性もばつぐんで、あらゆる居酒屋は、ジントニックの横にパーリンカトニックをおくべきなのではないかなどと思った。

 

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トニック割りを飲み終わると、じゃあ次はストレートでと言って、滴のようなかたちのグラスでパーリンカを出してくれた。チェイサーはアールグレイを出してくれた。

 

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ストレートで飲むと、アルコール度数が強いので口の中で気化するような感覚があった。ちゃんと蒸留酒なのだなあと思う。一方で、アルコールの強さに反して、ストレートでもとげとげしいところがなく飲みやすい。蒸留酒の中でもかなり飲みやすい方なのではないかと思う。ストレートだと確かに甘味がないのだけど、果物の印象が濃縮されていてこれがまたよい。

 

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チャームはカステラが出てきた。カステラにはオリーブオイルがかかっていて、これが思いの外よい効果を生んでいて驚いた。カステラ単体で食べるより、味が複雑で、オリーブの生もの感がプラスされて、これだけでちょっとした料理のようである。

 

カステラにパーリンカを合わせると、甘味が増幅され、口の中がふたたびお花畑のようになった……よいフィクションを摂取すると、頭がパッとその世界に飛ばされたりするけれど、まさにそんな感覚である。パーリンカはとにかく甘いものと相性がいいらしく合わせて食べるとめちゃくちゃおいしい。一瞬でカステラを食べてしまった。なんだったら、一本丸々食べてしまいたい……

 

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カクテルもできるという話だったので、ラズベリー?かなにかのパーリンカでひとつ作ってもらった。パーリンカの透明性を残したカクテルで、酸味としてクエン酸が入っているとのことだ。甘いもので感覚がフワンフワンしていたので、酸味がいい感じに口をリフレッシュさせてくれた。

 

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パーリンカはカクテルのベースとしてもよいのだな……なんでも行けるではないか……カクテルでもパーリンカ美味しいですねとマスターに言うと、パーリンカの弱点は知られていないことだけですからねと言って笑っていた。たしかにググってもあんまり情報出ないですねと言うと、そうなんです、wikipediaも僕が書いてますからねとマスターは再び笑った。話題にも隙がない……マスターは若くして、日本におけるパーリンカの第一人者なのである!

 

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別の日に行ったら、ハンガリーで道端のおじさんから買った野良パーリンカがあるというので飲ませてもらった。なんでも、ハンガリーではパーリンカは、日本で言えば梅酒のようなノリで普通に一般人が作ったりしているらしいのだ。ハンガリーでは果物が異常に安いらしく、大量に果物を仕入れてもそんなにコストがかからないのだそうだ。

 

苺の野良パーリンカは、口に含んだら、苺の最良の部分が吹き出して来たかのような香りがした。香水を飲んだかのようだ。こんな美味しいものを普通に道端のおじさんが作っているのか…… ハンガリーの野良パーリンカ恐るべしだ。バーで飲むのもいいけれど、やはり本場のハンガリーでその辺のおっちゃんからもらったパーリンカを適当にその辺に座って飲もうものならきっとこれは最高な出来事なのだろうな……

 

ああ、東欧に行きたいな。東欧ならヨーロッパでも物価も安いしな。コロナがなければ…

 

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苺の野良パーリンカを一瞬で飲み干した。パーリンカのよくないところはアルコールが強いのに異常に飲みやすいところである。自分の吐息がいい香りになっていることに気がついた。おいしいブレスケア……などと思いながら心の中でだけ笑った。バーでいきなり一人笑い出したら気持ち悪いやつでしかないからだ。

 

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