今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

青森とかいう寂しい街

青森で目が覚めた。ホテルの窓から外を見ると、雲がちぎれたように散らばっていた。ホテルの近くに、青森魚菜センターなる市場があり、いろいろ朝ごはんが食べられるらしかったので、出ていくことにした。

 

海に近い街というのは、建物の色素が薄い気がする。塩風対策で強めの建物が多いからなのだろうか。

 

市場では、どんぶりを持って、歩きまわり、刺身を盛ってもらい海鮮丼にして食べるという体験型ご飯が有名らしかったでそれでもいいかなと思っていたら、市場は、その日、なぜか全く活気がなく、多くの店がしまっていた。うっすらした明かりのどんよりした市場を歩くもいまいち気がのらない。

 

市場を抜けると、ビニールシートで隔てられた出店のようなものがあった。なんというか、戦前の闇市を思わせるところがあった。

 

 

好奇心で覗いてみると、90歳を超えているのではないかと思われる老婆が一人がさごそとおにぎりを焼いていた。

 

その様子を見ていると「あら、お客さん?」と話かけてくれた。

 

 

「鮭のおにぎりですか?」

 

「そうよ、ゆっくり焼いているから美味しいのよ」と言って老婆は笑った。じゃあ、ふたつくださいとつげると「もう少し待っていてね」と言って、おにぎりをひっくり返し始めた。これでもかとゴマがまぶされ、赤みの強い鮭が控えめに顔を出していた。

 

店先で何をするでもなく待っていた。僕のわずか十五メートルほど横では、青森の中学生男女が、なにやら、愛を確かめ合っている様子だった。

 

手持ち無沙汰で、長い以外の回答はないだろうと思いつつ「お店は長いんですか」と聞いてみた。

 

「そうね、長いわね。もうとっても長いのね」と答えた。

 

老婆は、おにぎりを七輪からとると、パックにつめて、新聞紙でくるくると器用に巻いてくれた。

 


「どこからいらっしゃったの?」

 

「埼玉からです。青森は初めて来ました」

 

「あら、そうなの、遠いところからありがとうね」と言って、おにぎりを渡してくれた。数百円払って、新聞紙に包まれたおにぎりを受け取った。新聞紙は、おにぎりで暖かかった。

 

「青森は、寂しい街よ。でもいいところなの」老婆は控えめの笑顔でそう言った。

 

「はい、いいところですね」すこし、言葉に窮してしまった。その言葉になんと答えても薄っぺらいような気がした。

 

 

老婆はまた七輪の世話を始めた。店先でパリパリのおにぎりを食べた。ごまの香りが強い素朴な味がした。寂しい街の海でも見るかと思い、店をあとにした。