今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何かについて考察するブログ

kiki vivi lilyがめっちゃ好き -午前0時52分 夜の隙間に入り込んで秘密のはなししよう

2017年の流行語大賞はインスタ映えだ。SNSが誕生して、だれもが自分の日常をきりとって、ぱーんと拡散するようになった。目の前の出来事や、ちょっとしたこころの動きとかそんなものを、おしゃれにカラフルにつかまえるのがうまい人がいる。

 

kiki vivi lilyの音楽は、そういう感性がベースにあるなとおもう。

 

 kiki vivi lily / AM0:52 

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PVがすごいインスタっぽい。(インスタ全然やってないからよくわからないけど…)

 

音の作りは、ガーリーでポップで都会的な感覚を電子音と微熱的なビートで包んだ、これだよ!ってかんじの現代感!めっちゃすきだ!くりかえされる ”午前0時52分” のファンシーでカレイドスコープなトリップ感。いい!巷ではネオソウルとよばれたりしているらしい。

 

君の瞳に見つめられ そのビートに心奪われ
回れ 見たことないような色模様
目の前に広がるトリップ
種も仕掛けもないようなトリック
逃げるわけにいかない夜は中毒 この気持ち無重力

 

愛していると 言いたいだけで
ほら 何度でも聞かせて
また電話をかけてしまう見慣れたナンバー
あなたは4回目のコールで取るでしょ
午前0時52分 午前0時52分

 

電話をかけてしまう小慣れたフリで

夜の隙間に入り込んで秘密のはなししよう

午前0時52分 午前0時52分トリップ 

 

 

「電話をかけてしまう小慣れたフリで 夜の隙間に入り込んで秘密のはなししよう」だって。青春群像劇をおもわせるみずみずしさだ。

 

 kiki vivi lily / LOVIN' YOU 

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表題曲のLOVIN' YOUがとてもいい。パソコンの画面に見入っていて、なんとなく体と頭がボーっとしてきて、あ~って眉間をぐりぐりするときのような、なんというかそういう気怠さがある。

 

おもむろに貼り付けられるこの間やった焚火の燃え殻

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熱狂的なわけでもなく、冷めているわけでもなく、音の作り方がちょうどよくここちいいなとおもう。すきだな~

 

 kiki vivi lily / Goes All Right 

www.youtube.com

 

この曲もPVがインスタっぽい感じがある。歌詞もインスタのキャッチコピーにしたいようなラインだ。

 

Who knows the entire world ?

Who knows the entire world ?

You know your entire world .

Only you!!

   

あなただけが、あなたの世界をしっているんだ!

漁船チャーター孤島脱出計画、および松浦亜弥万能論 中国廃墟潜入編⑥

前: 舟山老酒と中国共産党綱領。ベニヤ板ベッドで眠る。 中国廃墟潜入編⑤ - 今夜はいやほい

 

ベニヤ板ベッドで目を覚ました。朝、6時30分だった。時差を考えると、自分が会社に行く時間に起きたのだとすぐにわかった。目覚ましをかけずとも起きてしまう体になってことに、すこし悲しくなった。

  

船が出るか出ないか、喫緊の問題であったので、急いで窓を開ける。

 

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おばちゃんが朝の家事をしていた。風は凪いでいた。帰れるのでは!?とひとりにわかに色めきだった。加藤に散歩に行ってくるねと告げ、宿を出た。

 

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浜はきれいだった。朝早かったので誰もいなかった。

 

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野良犬がうろうろしていた。犬がやたらといる島だ。

 

うろうろし続けた。この島について一番詳しい日本人になっているのかもしれないと思った。朝日は豪快かつ穏やかだった。

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40分くらい散歩をした。

 

風吹いてないじゃん!これはいける!船が出るに違いないと喜び勇んで宿に帰った。宿の女将であるところのピンクパジャマのおばちゃんがいた。今天 我 去 上海  吗?とあっているのかあっていないのかよくわからない、仮初めの中国語で話しかけると、中国語はあいかわらずまったく理解できないが、どうやらピンクパジャマおばちゃんは船は出ないと言おうとしていることがニュアンスで分かった

 

船はやはり出なかったのである。

 

沈痛な面持ちで部屋へを戻る。みんなに船でないってさと告げると、困ったなあ的雰囲気になる。10分ほど、絶望して、まあしょうがないかと朝ご飯を食べに出ることにする。

 

地元の人々が朝食を食べている食堂のようなところに入る。

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どこからきたの?と聞かれたので、加藤がリーベンと答えると、リーベン!?がやがや リーベン!!?とにわかに沸き立つ。よっぽど日本人が来ない土地なのだろうと思った。

 

朝食、なんというか、日本人が想像する、中国の田舎の朝ご飯と言った感じで好感があった。

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肉まんは、なかなかおいしかった。朝の空腹に心地よかった。スープを飲むためにレンゲをとるとそれは大いに砂にまみれていた。店員がティッシュを指さした。それでふけと言っているようだった。

 

だいぶ汚かったが、まあいっか、郷に入れば、郷に従えというやつだと思い、スープをぐいぐい飲んだ。これが全然味がしなかった。刻んだネギと、ほのかな醤油の香りだけが、口の中でささやかに味覚をノックしていたが、ほとんどほんとうに味がしなかったのだ。こんなスープがあるのだなあと無味スープを飲んでいると、隣でおばちゃん店員が皿を洗っている様子が見えた。泥水のような汚さであった。ああ、これはまずいなと思ったが、まあいっかと食べ続けた。

 

なんだなんだ、リーベンなるものを見てやるかと、何人かの中国人が遠巻きにこちらを見ていた。

 

「よっぽど日本人が珍しいんでしょうね」中国慣れしている加藤はうまい、うまいと言いながら衛生的によろしくなさそうな朝食を食べ続けていた。

 

 加藤が無味スープを飲み、口を開けた。

 

「帰りたいですね」

 

「そうですね、もうこの島ですることもないですしね」山田は本当に帰りたそうであった。彼はシティーボーイ的感性を強く持つやつだったので、そもそも廃村のあるわけのわからぬ島などではなく、この世の中心はここといわんばかりにきらめき立つ、上海の夜景を見ることを楽しみにしていたらしかった。

 

「帰りたいね、そもそも、もし明日もまた船が出なかったら、飛行機乗れないしね…会社いけないのは非常にまずいよ……」労働者の僕には主任の顔がぷかぷかと浮かんでいた。

 

加藤は、ひらめいた!といった顔でとんでもないことを言い始めた。

 

「漁船をチャーターしましょう」

 

客船がでないと言っているのに、漁船チャーターなどできるのか?という疑問はさておき、帰りたい指数が飛躍的に上昇していた我々は、とりあえず漁港へと向かってみることにした。

 

漁港で待ち構えていたのは、絶望的光景であった。

 

横風にあおられて漁船が転覆しかかっていたのである。

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我々は、呆然とした。漁港には船が横転しないか心配で人が集まってきていた。宿の周りはあまり風が吹いていなかったのだが、港では鉄砲風が吹いていたのだ。漁船チャーター脱出計画は、僕の中では一瞬でとん挫したのだが、加藤はあきらめなかった。

 

加藤はうろうろしている漁師オーラを放つ人に話しかけた。もちろん、なんだこの頭のおかしい外国人はといった感じでだれも取り合ってくれなかった。船が目の前で転覆しかけているのだから、当たり前の話である。仮に船に乗せてくれることになったとして、この横転しかかっている船を尻目に出港するのはあまりにも自殺行為であるように思えた。僕たちはとりあえず、ああ、帰れないんだね、そうだね帰れないねと、無意味に状況を確認しあった。

 

漁船チャーター脱出計画に失敗した我々は、島ですることがなくなってしまった。島はなかなかの田舎だったため、観光客がなんとなく時間をつぶせそうな施設などが何もなかったのだ。グレートウォールに阻まれ、SNSもグーグルも使えないのだから、本当になにもすることがないのである。

 

仕方がないので、街をうろついた。この街では麻雀が大変はやっているらしく、いたるところから牌がこすれるじゃかじゃかという音が聞こえてきた。大通りの裏の通りなどでは、3軒に1軒は麻雀をしている音が聞こえた。中国人が一般的にどれくらい麻雀好きなのかはわからないが、とにかく異様なほどに町中にじゃかじゃかという音が響いていた。

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昼ごはんを食べることにした。加藤が中国版食べログ的なサイトを使いこの島で唯一評価が高いらしい海鮮麺屋へと行くことになった。

 

大変おいしかった。 

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店のおばちゃんにもやはりどこから来たの?と聞かれたのでリーベンと答えると、おばちゃんは大変びっくりした様子で、僕たちの写真をパシャパシャと撮りだした。日本人は本当に珍しいらしい。

 

かわいらしいおばちゃんだった

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15時、僕たちは中国の孤島でふたたび本当に何もすることがなくなった。街をうろうろするのにも飽きていた。圧倒的無目的さでふらふらしていると公園にかわいらしい健康器具を発見した。本当に暇だったので、1時間ほどかたかたと器具を動かし続けた。虚無との戦いだった。

 

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 加藤が松浦亜弥のYeah!めっちゃホリデイを流した。Yeah!めっちゃホリデイはおもったよりもだいぶテンポが速く、ついていくのが精いっぱいであった。何もすることがないと人間はおかしなことをしだすものだなあと思った。加藤は、おそらくこの島で初めて松浦亜弥の声が流れましたねと楽しそうに言った。山田は、Yeah!めっちゃホリデイは万能ですねとよくわからないことを言った。

 

そのあと、僕のオーダーで河南スタイルを流した。島に似合わない突飛な明るさの河南スタイルに合わせてふたたび足をパタパタさせた。

 

「嵊山スタイルを確立しましたね」加藤はノリノリだった。

 

「新しいムーブメントを作ってしまったな」僕も満足げに言った。

 

オネットがホッホッホッと笑った。

 

つづくかもしれない

舟山老酒と中国共産党綱領。ベニヤ板ベッドで眠る。 中国廃墟潜入編⑤

前:

嵊山島上陸、廃墟となった後頭湾村で犬が吠えた 中国廃墟潜入編④ - 今夜はいやほい

 

記憶が定かじゃなくなってきたのでディレクターズカット版。

 

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タクシーに乗る。廃墟から帰還する際に嵊山島のトンネルを通る。これが底なしの恐怖。工事中のトンネルはなんと竹で足場が組まれていて今にも落盤が発生しそうな雰囲気だった。車が駆け抜ける空気圧で、すごい勢いでカバーの布がはためいていた。トンネルは車1台しか通れない幅だったので、タクシードライバーはクラクションをびゃーびゃー鳴らし、前から車が来ないように威嚇しながら爆進していた。

 

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とても静かな、街で一番栄えている通り。港町なので独特のタフな感じが漂っていた。

 

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 時間が限りなくゆっくりだ

 

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この街はパジャマの民が多い。

 

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海の男はくすんだ空を見ていた。目を細めると地中海にいる気がしないでもない。

 

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小さな工具店が並んでいた

 

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市場の周り、タクシー、バスがたくさん行きかう交通の要所。色の薄い街であった。

 

待ちに待った夕飯タイム。漁港なんだし天下の中華料理だし、きっとうまいものがあるだろうと期待して、適当に店に入る。

 

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美味しい蟹、しかし、食べれる部分が絶望的に少なかった。

 

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空腹な男たちに蝕まれようとしている魚。淡白であまり魚のうまさがなかった。味付けはよかった。

 

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絶望的な味だった、なにか。絶望的だったのでぶれてしまった。

 

全体的に、非常に微妙な味が多く、漁港だ!海鮮だ!ぜったいうまいものあるだろうテンションで店に乗り込んでいった我々の心はいともたやすく砕かれたのだった。

 

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店を出ると、あたりは真っ暗であった。昼、漁にでていた人が戻ってきたのか、にぎやかになっていた。飲食街の雑多なエネルギーがほとばしっていた。

 

宿に帰る

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海岸線にだけ元気にあかりがともっていた。

 

宿のベッドに寝っ転がる。ベニヤ板の上に布がかぶせてあるというレベルの原初的なベッドだった。香港で一番安い宿に泊まった時でももう少し柔らかみがあったぞ、どうなってるんだ!これで寝るのかとにわかに絶望が襲う。どこまでも限界的な状況である。

 

絶望を収めるべく、舟山市のお酒を飲む。

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薄い紹興酒のような味。グレートウォールに阻まれほとんどネットも見れなかったので、テレビをつける。

 

中国共産党による思想教育のようなものが延々と流れていた。

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ベニヤ板ベッドに横になり、うす紹興酒を舐め、中国共産党の思想教育を眺め、疲れたね、疲れましたね、と慰労をしあう。海風が窓をどんどんと叩いていて、ああ、これ、明日、たぶん、船でないんだろうな…という諦念が体にじわじわと浸透してくる。

 

安い酒に酔いながら眠りについた。硬く冷たいベッドだった。

 

嵊山島上陸、廃墟となった後頭湾村で犬が吠えた 中国廃墟潜入編④

前: 出上海、一路、枸杞島へ。船でお姉さんは絶句した、酒が必要だった 中国廃墟潜入編③ - 今夜はいやほい

 

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「ついた!ついたぞ~!!」僕は4時間閉じ込められた閉鎖空間から解放された心地よさでいっぱいであった。

 

「じゃあ、市内のほうへ向かおうか」というと、加藤が「いや明日のチケットを買っといたほうがいいですね。チケット取れなくて帰れなくなると最悪なので」

 

確かにそれもそうだ、さすが加藤は旅慣れているな、と感心しつつ、枸杞島のチケット売り場へと向かった。加藤が、明天、上海、票!みたいな、原初的なコミュニケーションを試みる。

 

カウンターの若い女性は、わかりやすく 困惑し、紙何かを記した。漢字文化圏の我々は筆談によるぎりぎりのコミュニケーションが可能であった。明日のチケットは估计でなんとかかんとかという文字が記されていた

 

なんだこれは、どういうことだと4人で頭をそろえて解読を試みる。汁が枯れているのか?……わからない…カウンターの前で、汁が枯れている問題に4人で頭を悩ませていると、上司的な強面な女性がやってきた。彼女は我々に、全力の中国語で何かをしゃべり続けた。ほとんど怒鳴り声に近い覇気だったので、我々は困り果てた。強面な上司は、我々に漢字で何かを書いた。”ホテルで聞け”と書いてあるようであった。

 

仕方がないので、我々はチケット売り場を離れ船着き場へと戻った。乗客待ちをしていたタクシーが消え去っていた。

 

「あれタクシーは?まずいですね、どうしましょう」山田がタバコに火をつけた。

 

「ああ!ちょっとまって、もしかして、これ、明日、風の影響で、船がでないということなのでは!?!?枯れ汁は推計するって意味らしいです……」加藤は珍しく非常に焦っていた。

 

 

「え!明日帰れないってこと!?」僕は、労働者であったので、帰れないと非常にまずい状況であった。

 

 

「そうですね、まだわかりませんが……どうしましょう… 明日帰れないと、そもそも僕たち金が尽きる心配がありますね…この島にATMがあればいいですが、下手したらないかもしれません…

 

「金がなくなったら……どうすればいいんだ!?いくら上海から4時間の小さな島でもATMくらいさすがにあるのでは!?日本大使館に電話か?」僕は非常に動揺した

 

 

「仕方ないのでとりあえず宿まで行きましょう」加藤もさすがに狼狽しているようであった。

 

 

「でも、タクシーいないよ、歩いて行ける距離なの?」

 

 

「いや厳しいですね…」

 

 

「まじかよ……」

 

 

「限界的状況ふたたびですね」オネットは少し楽しそうだった。

 

 

我々は帰宅手段が消え去り、市内への交通手段も無くなり、挙句の果てには、資金繰りリスクが発生していた。港で立ち尽くした。強面上司に怒鳴られたのも地味に精神を疲れさせていた。しばらく呆然としていると、ぼろぼろのトラックが港へやってきた。

 

「もはやヒッチハイクしかないのでは?」本当に限界的な状況だなあと思った。

 

加藤は走っていき、交渉を始めた、しかし、トラックの運転手は、わけわからない外国人だなあと言った調子で取り合ってくれなかった。

 

「遠いんだよね…?」

 

「そうですね」

 

「うーむ」

 

「まあ、いっか」

 

「いや、やばいのでは?」

 

「いや、まあいいいのだ」

 

「うーむ」

 

「ホッホッホッ」

 

などと男4人で悲しみにさざめいていると、なんと気まぐれにタクシーがやってきたのだ。たすかった!歩かないですむ! タクシーはとにかくボロボロで四方に大きな傷が入っており、左前のライトのところなどは、表面の鉄板がボコっとめくれあがっていた。一体何回事故を起こしたのかわからない、暗黒のタクシーだったが背に腹は代えられないので乗車を決めた。

 

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タクシー事故を起こすことなく20分ほどで、宿に到着した。思っていたより宿はちかいところにあった。

 

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真っ青な宿であった。荷物を置き、すぐ嵊山島へと向かうことにした。タクシーは宿番のおばちゃんが用意してくれた。

 

タクシーは車線という概念を盛大に無視して、時には左、時には右を走りながら、軽快に島を駆け抜けていった。海からの風が車内に流れ込み、ようお前らよく来たなと言っているようであった。

 

橋をわたった。なぜか島に似合わない非常にリッパな船であった。ついに嵊山島に上陸した。

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僕たちの目的地は嵊山島の廃村であった。かつては漁村として栄え2000人ほどの人が暮らしていたらしいのだが、今では、村は荒廃の一途をたどっているようであった。

 

タクシーは島の頂上近くまで上っていった。そこは大変な田舎だった。

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タクシーから降り、とぼとぼと峠を超えると視界が一気に開けた。見下ろすすべてが無人の廃墟だった。ついた!ついについたのだ!!僕たちはにわかに沸き立ち、はやくいこうと、廃墟への道を威勢よく下っていった。

 

 

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草は元気に生い茂っていた。デスクワーカーには恐ろしいほどの急こう配であった。道すがら韓国人の若者二人とすれ違った。きっとかれらも、同じようにネットの記事を見たりして、ここまでたどり着いて、同じようにSNSに写真を上げているんだろう。こんなところにまでワールドワイドウェブの力が及んでいるんだなあ。

 

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15分ほどかけ下へとくだっていく。街の中心部まで降りてきた。薄雲やがかかっていて、廃墟ははかなさを漂わせていた。

 

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天井が抜け落ちている

 

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細い道をどんどん下っていく

 

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港まで出た。

 

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とても静かで波音が響いていた。

 

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崩れ落ちていく村は幻想的だった。ひとびとの生活の痕跡が所々に残っていた。よく来たなあ。頑張ったなあと、我々はねぎらいあった。僕が、ここに来れたんだから、もう世の中の大体のところに行けるだろうなあと言うと、加藤は少しうれしそうであった。

 

疲れたなあと腕を上げ伸びをした。ふと熱力学の法則が頭をよぎった。僕は文系なのであまりよくわからないのだが、熱力学にエントロピー増大の法則というやつがある。熱が拡散するように、人は死ぬし、街も壊れる。こんなに必死に動き回っても、エントロピーの増大に寄与しているだけなのだなあ。巨視的に見ればとにかく圧倒的ダイナミズムで世界は拡散の一途をたどっているのだ。物事は大きな法則なのだ。

 

そんなかんじで、崩れた家を見てなんとなく世界の法則に思いをはせたり、なんでこんなところまで来てしまったんだろうというおかしさについて笑ってみたくなったり、そもそもこんなところに、行こうぜ、いいですよ、と二つ返事でのってくれる友人が何人かいるということにうれしくなったり、僕の感情は第七官界を彷徨し始めていた。中国の片隅の小さな小さな島の廃墟で僕はとにかくとてもいい気分になっていた。野良犬が二匹こっちを見て、なんだこいつらといった調子で、厳かにバウバウと吠えた。

 

つづくかもしれない

出上海、一路、枸杞島へ。船でお姉さんは絶句した、酒が必要だった 中国廃墟潜入編③

前:

響きと怒りのチケットカウンター、南浦大橋で声は破裂した 中国廃墟潜入編② - 今夜はいやほい

 

われわれの目的地は嵊山島(しぇんしゃんとう)だったのだが、そこへ行くためには、まず枸杞島(ごうちとう)に上陸する必要があった。 

 

霧ははれてきたものの、上海の空気はかなり汚れており、車窓からの景色はぼんやりとしていた。汚染の影響なのか、バスの中でものどがじんわりと痛くなった。

 

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1時間ほどバスで寝ていると、船着き場に到着した。ここは、上海の離れ小島のようなところで、嵊泗列島行きの船がここにから出ているのである。

 

バスを降りる

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船のターミナルは、人でごった返していた。

 

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島へ向かっていく人たちは、漁業従事者が多いのか、肌が焼け屈強な体躯をしていた。そして、やはり、話し声がとてもおおきかった。ヘビースモーカー山田は、もし島まで行ってたばこが売ってなかったら死ぬと言い、喧噪の中、たばこを探し、さまよっていあるいていた。

 

「山田くんは早くも、偉大な中国人民に溶け込みだしましたね」加藤は楽しそうに言った。

 

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いよいよ、船へ乗り込むことになった。

 

「なんだかすごい乗り込み口だね…難民になったような気分だ」などと誰かがつぶやいた。僕は、カイジの世界に迷い込んだような気がした。

 

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 船は非常に狭かった、椅子は硬く隣との距離も非常に近かった。そして、その船に乗る中国の人々は、やはり、耳をつんざくような音量で会話をしていた。まだ、会話の内容が分かれば、気にならないのかも知れないが、全く意味の分からない会話を大音量で聞くのはそれなりにしんどいことなのであった。

 

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 「これに、僕たち4時間乗るんですよね…」と山田は絶望的な声を上げた

 

「あくまで順調にいけば4時間といったところですね。この狭さ、うるささ、椅子の硬さで4時間はなかなか限界的状況ですね」と中国語にかき消されながら加藤は答えた。

 

「つらい、もしかしてけっこう揺れたりするんじゃないの?やっぱり吐く人とかいるのかな」僕は大変不安であった。

 

「吐瀉袋はあるみたいですね」加藤は前の椅子背中にあるポケットから袋を取り出した。

 

「うーむ、これは確かに限界的状況だ」僕は、やはり暗澹たる気持ちであった。

 

しばらくすると船は動き出した。さらば、偉大なるアジアの大地!などと心で唱えて、ひとり景気づけをした。

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ひとつよいことが判明した。 船は予想していたほど揺れなかったのである。とりあえず、吐き気に襲われることはなさそうだなと安堵した。10分くらいすると無限に動き回っていた乗客が徐々に席に着き始め、船に秩序が訪れ始めた。

 

「しかし、これはつらいですね。4時間このままというのは、完全にまずいです。」長動症に失陥している加藤は本当に発狂しそうな雰囲気だった。

 

「限界的状況だな……」僕がつぶやくと、山田も「限界的状況ですね……」とつぶやいた。我々は、限界的状況という言葉に面白さを感じ始めていた。

 

「こういう時は酒しかないんですよ。現状打破のため、ビール買ってきますね!!」と言い放ち、加藤は売店へと去っていった。

 

 神々しい青島ビール

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僕は大学生の頃第二外国語が中国語だったため、ほんの少しだけ中国語が分かった。そのため、啤酒!啤酒!などと騒ぎ缶を受け取った。おそらく10も記憶に残っていない、中国単語のなかで、ビール=啤酒は覚えていた自分の脳みそが非常に残念であることが分かった。 

 

なんかぬるいな、そして炭酸が弱い、などと文句をこぼすと、加藤は、青島ビールはそこがいいんですよ、と訳知り顔をしてうまそうにビールを飲んだ。僕も青島ビールは好きですねと山田もごくごくとビールを飲み干していった。加藤と山田はふたりとも麻布高校の出身であった。ふたりには、たしかに似たような何かを感じさせる瞬間が時折あった。

 

船は快調に海原を進んでいたが、特に景色に変化があるわけでもなく、ビールを飲み干した後、再び窮屈な閉鎖空間が生む限界的状況が訪れた。

 

「酒が足りないですね…ていうか青島ビールじゃ、アルコール度数が弱くて酔えませんね」

 

加藤は酒がかなり強かった。

 

「そうだね、追加で飲んでもいいけど、この辺にしておくのもありかと思うよ」と僕は良識派的な意見を述べた。

 

「あ、なんか紹興酒みたいな酒がありますよ」ヤマダはカウンターのほうを指さした。

 

「きくちさん、限界状況突破のためにはとにかく酒を飲み、意識を失うのが最も良いのです」そういうと加藤は小走りでカウンターへ向い、アルコール度数の高そうな酒を買ってきたのだった。

 

中国酒?

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「35%か、なかなか強いな、ちょっと待って、そもそも、どうやって飲むの?まさかこの船内で回し飲み?」僕はふたたび、良識派的意見を言った。

 

「きくちさん、ビールの空き缶があるでしょ、それにいれるんですよ」加藤はそう言うと、酒を注ぎだした。

 

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「これ、本当に限界的状況だな……」と絶句していると、加藤の隣に座る同い年くらいの女性が”オーマイガッ、この外国人たちは…”といった表情を浮かべているのが見えた。

 

「加藤君、きみの後ろの紫のセーターの女性がドン引きしているよ」と告げると、加藤ははらりと振り返った。持ち前のコミュニケーション能力で、「は、は、ごめんごめん」とにこやかに笑い、つまみに買ってあった煎餅をセーター女性に渡したのだった。

 

すると、女性はしょうもないやつらだが、悪いやつらではなさそうだと思ったのか、くすくすと笑い、お返しに飴をくれた。

 

僕たちは、なぜかいい感じにコミュニケーションが成功したことに、にわかに盛り上がり、軽快に酒を飲み進めていった。

 

「オネットは飲まないのか?」加藤が言うと「僕は本を読むんだ」と彼は本を取り出した。もくもくと本を読んでいるようであった。10分ほどして加藤はオネットの本をのぞき込んだ。

 

「何読んでるの?」

 

カポーティ―の冷血だよ」

 

「まだ10ページしか読んでない、全然進んでないじゃないか、やっぱり酒を飲むべきだ!」といい加藤はオネットの空き缶に中国酒を注ぎこんだ。

 

「健康酒って書いてあるね、じゃあきっとどれだけ飲んでも健康になるだけなんだろうな」僕は、酔ってきたのかややわけのわからぬことを言い、 そのまま酔いに任せて、眠りについたのだった。

 

目が覚めると残り20分ほどで枸杞島に着くような時間になっていた。日本から持ってきていた「青年は荒野をめざす」の文庫本を取り出した。主人公の青年は、今日、僕は冒険をするんだと決意し、モスクワへ向かう飛行機の中で添乗員をナンパし、ペーソスに満ちた音楽を味方につけ、”形式にこだわるな、感じたままに吹いてみろ!それがジャズだ”などというかっこよいセリフとともに身を焦がすようなワンナイトラブにいそしんでいた。僕は自分のほうがよっぽど荒野をめざしているのではないだろうかなどと思った。

 

東京から12時間、僕たちはようやく枸杞島に到着した。島の海は眠っているかのように穏やかで、きらきらと光っていた。

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 つづくかもしれない