先週、暇だったので、芸子さんを探して向島散歩をした。残念ながら芸子さんは見つからなかったのだが、その時、偶然、古めかしい喫茶店?パン屋?のような店を発見して、ただならぬ怪しげな雰囲気を漂わせていたので、これは行かねばならないなあと思っていた。
そして今週、やはり、暇だったので自転車にまたがり、文京区からはるばる押上まで行ってきた。汗ばむような夏日であった。
紫陽花の季節が到来していた。
ちょこちょこ寄り道をしながら1時間ほどで「カド」についた。
褪せて、季節感を失った「季節の生ジュース」の看板。ワクワクする外観だ。歴史を感じさせる。
くるみパンが推しのようだ。
外からは暗くて様子が分からない。恐る恐るドアを開く。店内には異世界が広がっていた。
壁中に貼られた西洋絵画。雑多に置かれたアンティーク。時がとまっているかのよう!
天井にはバラがあしらわれている。おしゃれだ。
気さくなお兄さんがオーダーを聞きに来てくれる。
「当店は初めてですか?」
初めてですと告げると、メニューを説明してくれる。ジュースとパンが売りとのことで、バナナジュースと、チキンカツサンドを頼む。大きな椅子に腰かけ寝ている少女の絵が気怠げでいい。見ているだけで眠たくなってくる。
店に入ったころは14時過ぎで、他には客がいなかった。朝は殺人的に人が来てパンを買っていくんです、と店員のお兄さんはミキサーを回しながら独り言のように言った。店内の装飾にあっけにとられて、気もそぞろに本を読みながら、待つこと5分。
でーん
バナナジュースとチキンカツサンドがやってきた。チキンカツサンドは、チキンカツがクルミパンにはさまれていて、パンからいい香りがする。
パンがほわほわでたいへんにおいしい。むしゃむしゃとたべる。ソースとキャベツが良いアクセントとなり、チキンをおいしく引き立てているのである! そしてほのかに香るくるみ。バナナジュースもシンプルだけどあまくておいしい。ごくごくと飲む。なんでも、東京で2番目に古いジュース屋さんなのだそうだ。1番は本郷にある万定。でも万定より、カドのほうがおいしいなと思った。
近所の人が持ち帰りで何人か来店していた。ジュースを持ち帰って飲む人が結構多いようだ。
ゆったりとした時間がながれていて、歴史と異世界感を同時に感じさせ、なおかつ、ご飯もジュースもおいしい!これは最高の店だ!
店を出ると、川で人が宙を舞っていた。これはいよいよ夏だなあ。