今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

禁酒令下にジンづくり。

残念なことに、大変残念なことに、コロナウイルス収束の気配がない。収まるどころか拡大をしているといっていい。そろそろファクターXの捲土重来に期待したいところだが、それもない。居酒屋での酒の提供がなくなったかと思いきや、なんと、コンビニで酒を売るのはいかがなのかという知事の小言が出たとか出ないとか……大変なことだ。酒というのは、目の敵にされがちなものである。

 

まさか、現代に禁酒令がやってくるとは。歴史上の出来事じゃなかったのといった感じの晴天の霹靂だ。歴史は繰り返すものである。しかし、翻って、繰り返すのであれば、我々は、禁酒の歴史に学ぶことができる。アメリカの禁酒法時代の人々はいかにして飲酒をしていたのか。

 

答えは、バスタブなのである

 

アメリカのアルコール大好き人間たちは、禁酒法令下でバスタブに蒸留器を沈めて酒を作っていたらしいのだ。想像するになんとも滑稽な図である。しかし、当時の人々は切実だったのだろう。バスタブに蒸留機、ここにあ、り得ることはなんでもやってしまえという、アメリカのイノベーションの力を感じる。流石である。我々はアメリカのこのたくましいイノベーション魂に学ばねばならない……このバスタブ蒸留システムの酒は、通称バスタブジンと呼ばれていたらしい。

 

素人が作ったものなので、品質がよくないものもあり、健康被害も出ていたなんていう記述がある。

 

ja.wikipedia.org

 

なるほど、作るのか!そうか、買う、飲むの視点はあったが、作るというのはあまり考えてみたことがなかった。とりあえず、ジンの作り方を調べてみるかと、ネットで検索してみると、ジンというのはスピリッツにジュニパーベリーというスパイスの香りが付いている、というのがベースにあり、そこに色々な香りを足していくという構造らしいい。(たぶん)

 

作り方を調べていたら、Twitterでフォローしているbadさん( 水蛇の背 )の記事が出てきたので参考にさせてもらった。 

自家製ジンは作りは究極に自由な世界だった…! 自宅でも作れる世界に一つだけのオリジナルジンはお世辞抜きで美味いという話 - ぐるなび みんなのごはん

 

禁酒法下のアメリカにならって、蒸留器を沈めてジンを作るぞ!などと意気込んでしまうと大変まずいことになる。残念なことに、日本国の法律では酒を勝手に作るのは密造酒扱いで違法なのである。酒税法というのはなかなか厳しくできているのだ。ジンを作るときは、再発酵しないように、かならず20度以上の酒をベースにしなくてはならない。

 

とりあえず、アメリカン・イノベーティブ・スピリットにならい、スピリッツの代表格のウォッカを買ってきて、ジュニパーベリーを漬け混み、マイ・オリジナル・バスタブ・ジンを作ってみることにした。

 

ウォッカは安いのが近所のスーパーにあったのですぐ入手できた。入れておけばなんとなくいい香りがしそうなオレンジも買った。シナモン、カルダモン、クローブなどは、カレー作る用に買っていたものがあったので棚から出してきた。ニョキニョキ生えているやつは観葉植物的においてあったローズマリーである。

 

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右端の瓶に入っているのが、ジンの香りの元となるジュニパーベリーだ。ジンを作るにはこれが欠かせないらしい。わかりやすいところだとザワークラウトに使われているので、その匂いを想像してもらうとよいと思う。

 

近所のスーパーにはなかったので、カルディに行ってみた。売っていなかった。謎の調味料、をいろいろ取り揃えているカルディでも売っていないのか、どうしたものかと思いながら、ふらっと成城石井に行ってみたらスパイスコーナーに売っていた。なんとなくあいそうなアニスシードもあわせて買ってみた。400円くらいだったのではないかと思う。

 

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ということで夜中にひそひそと台所に現れて、ブツをウォッカに沈めていく。夜のしじまにぽちゃぽちゃという音が響く。ひそやかな気分である。オレンジの皮を剥いたので、柑橘の匂いが漂っている。一番最初なのでとりあえず色々入れてみることにした。ジュニパーベリー、シナモン、カルダモン、オレンジ、アニスシードローズマリーを入れてみた。

 

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こんな感じ。

 

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もうひと瓶の方は、ジュニパーベリー、カルダモン、茶葉を入れた。

 

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どんどん色が濃くなっていく。一般的に売られているジンはこの漬かった状態のものをさらに蒸留するようなので色がついていないものが多いらしい。 (製法と種類 3.ジン スピリッツ入門 Liqueur & Cocktail サントリー)漬け込んだ酒を見ながら、ビールを飲む。酒を見ながら酒を飲むというのは、白米で白米を食べているような限界性を感じる。

 

そして、待つこと二日、こんな感じになった。

 

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左から、市販のジンのビーフィーター、オレンジを付けたジン、茶葉のジンである。

 

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 とりあえずストレートで飲んでみる。オレンジのジンはかなりオレンジの香りが強くでいていた。そこにアニスの甘いハーブ感とシナモンの香りが追ってくる。初回から結構おいしいものができた。カルダモンやローズマリーはあまり感じなかった。シナモンがかなり強いのでもう少し少なめでも良かったかもしれない。

 

茶葉の方は、キリッとしていて、市販のジンに近い飲み心地だった。柔らかくお茶の香りも出ており、なかなかおいしい。わずか二日漬けておくだけでいい感じになるのだな。市販のジンと飲み比べてみると、市販のものはバランスをよく整えられているのだなということも分かった。

 

オレンジのジンをキンミヤグラスに注ぐ。氷をいれ、トニックウォーターを注いでいく。小さな炭酸の泡が吹き上がってしゅわわわわと音を立てている。キンミヤのグラスに入っていると、ジントニックもチューハイのようである。

 

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炭酸に乗って、オレンジとアニスがより引き立ってぱーっと広がる。おいしい…… なんといっても、漬けとくだけだし簡単だ。ジンを作るの、たのしいじゃないか。

 

その日以来、僕は、ウォッカを買ってきては、キッチンの白熱灯の下、ジュニパーベリーをウォッカに漬ける人間と化した。スーパーに行き、何か混合できるものはないか探すようになった。チェリーが売り始められていたので、買ってきて漬けてみることにした。どう考えても美味しそうだ。

 

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真っ赤に仕上がった。染め上がったボトルはどこか気品さえ感じさせるではないか。なかなかいい感じである。

 

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飲んでみて驚いた。全然、チェリーの味も香りもしないのである。ジュニパーベリーも少なかったのか、もはやただのウォッカである。ウォッカ自体べつにまずいわけではないので、別にこれもにまずくもないのだが、ジンではない。赤いウォッカである。赤いウォッカ、それはそれで、ある意味でロシア的で良いのかもしれないが、ジンの感じが極めて薄い。

 

漬けるものは、全くもってなんでもよいということでもないのだな。スーパーで叩き売りされていた激安のチェリーだったので、もしかしたらそれが悪かったのかもしれない。

 

ある日、中華食品店でジャスミン茶が売っていたので速やかに脳内会議をおこなった結果、これは間違い無いだろうという決議が出た。

 

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漬けおいたボトルのキャップを捻ると、その時点で、ジャスミン茶の香りがした。トニックで割ると、想定していた通り茶の香りが広がった。カルダモンの爽やかな香りも奥の方に感じた。正解である。

 

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夜陰に乗じて、ミルクティーも作ってみた。ジャスミン・ジン・ミルクティーである。 

 

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もう少しジンを入れるべきだったのか、かなり薄味になってしまった。しかし悪くない。アルコールのニュアンスも程よく残っている。よく寝れそうな気がする。
 

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ジンというと、季の美など、日本産のジンもよく見かける。季の美は確か玉露などが漬けてあったのではないかと思う。これが結構おいしいのだ。そうか和風もありだなと思い立ち、雨にもかかわらずスーパーに行く。酒に漬けても美味しそうなものを探してみる。香りが弱いと負けてしまうのである程度、しっかりと香るものがいいだろうと、グルグル回っていると、大葉とわさびをみつけた。

 

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大葉わさびジンは、緑茶のような色になった。なかなかきれいな色だ。鼻を近づけると、ふわっとわさびの香りがした。

 

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キンミヤグラスでジントニックを作る。トニックで割ると、大葉の清涼感のある香りが前面に出てきてた。これは夏場に良さそうだ、ごくごくいける。ちょっとこい魚の煮付けなどと一緒に飲みたい。魚の油と、煮付けのタレを、スパイシーな大葉の香りが流すのである。大変良さそうだ。

 

わさびは辛っ!という感じではなく、奥のほうでふんわりとチリ…チリ……くらいの刺激だった。生のわさびをいれたので、すこし生野菜特有の青臭い感じが残った。わさびの量は半分でも良かったかもしれない。夜中に自家製ジントニックを飲むのが習慣となってきた。

 

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和風ときたら、次は中華だろうと、スーパーを再びぐるぐるしていると、スパイス売り場に、クコの実がどっさり売っていた。パッケージの裏側を見ると、中国では、酒に漬けて薬用酒としても飲まれていると書いてあった。おお、まさにこれだ!きっと合うに違いないと買って帰った。

 

クコの実に加えてシナモンも入れた。シナモンの力で茶色になった。ウィスキーボトルに入れているので、スコッチみたいに見える。

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ほのかな果実感とシナモンの香りが引き立っている。たしかに、少し薬膳的な滋味深い印象がある。シナモンを入れるとアルコールの尖った感じがすこし落ちて、まろやかでみやすくなる。クコの実は食べられるので、飲んでいるとときどき実が流れ込んできて楽しげである。五味子を買ってきたら、韓国風のジンもできそうだ。

 

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作ってみて分かったのだが、ジンは大変自由な酒だ。禁酒令が過酷化した場合でも、ウォッカだけ事前に仕入れておけば、スーパーに売っている果物、スパイス、野菜、乾物で無限のバリエーションを組むことが可能である。ウォッカを大量に備蓄せねばならない!