今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

茶の座売り文化が残る、入間 當摩本店で狭山茶を飲む。

茶といえば、静岡というイメージがあるけれど、実は埼玉でも結構茶が作られている。とは聞くものの、では飲んだことあるのか?と問われると、数回ちょろっと飲んだことあるかなというくらいで、あまり、印象がない。

 

 

入間という町に来ていた。入間基地があるところである。埼玉の西の方だ。ここに、きのこと山菜が食べられるともんという名店があるというので、食べに来たのだ。

 

入間 ともん


鮎に添えられたフキノトウの漬物ときのこ汁がやたらとおいしかった。いやあ、この酷暑のなか、駅から10分かけて歩いてきてよかったなあと、だらだら駅に向かって帰っていると、周りに比べて異様に古い店があるのを見つけた。

 

なんなのかなと、Google マップで調べてみると、どうやらそれは、お茶屋さんであるらしかった。

 

 

ああ、そうか、この辺って狭山茶の生産をしているのか、もしかしてうまい茶葉買えたりするかなと入ってみることにした。木製の引き戸は、1センチひいただけで、それが歴史あるものであることを感じさせた。店には誰もいなかった。

 

 

すみませーんと呼びかけてみるも、なんの反応もない、休みだったか、仕方ないなと店を出ようとすると、奥から店主が、ああ、すみません、すみませんと、申し訳なさそうな手振りでやってきた。

 

「こんにちは、ここってお茶買えるんですか」

 

「はい、買えますよ、よかったらその辺座ってくださいね」といわれ、僕は入り口すぐの畳に腰をかけた。

 

「なんか、すごい歴史がありそうですね」

 

「私たちの代で5代目ですからね」

 

「5代目ですか。めちゃくちゃ長いですね。100年以上ですよね」

 

「まあ、古いだけですけどね。お茶でも入れましょうか」と笑ながら言うと、店主は、これはジャスミンみたいに、花のような香りがしていいんですよ、あとそっちは少し旨味が強くて、こちらはね...と説明をしてくれた。

 

じゃあ、この辺を入れましょうかと、ちょきちょきパックを切って、茶葉を見せてくれた。手揉みされているので、茶葉は細長くなっている。

 

 

「その火鉢?かっこいいですね」

 

「これももうずっと昔から使っているんですけど、今鉄瓶が割れちゃってて使えないんですよ。両端がちょっとずつ凹んでるでしょ。これ、昔、キセルの灰を落とすのにこつこつやっていたら、すり減ってきちゃったらしいんだよね」

 

「すごいですね...歴史を感じますね。外は暑いですけど、日本家屋ってやっぱり中に入るとすずしいものですね」

 

「そうなんですよ、それはなかなかいいところですね」

 

「いまこうやって、店先で茶を入れて、小売する店って珍しでしょ」と言って、店主はポットでお湯を注いだ。どうも、こう言う販売スタイルを座売りと言い、昔は結構あったらしい。

 

 

さやまかおりというお茶を入れてくれた。とにかく分厚い旨味があって、飲み物と言うと香りがまずくるようなイメージがあるけれど、むしろ旨味が前面に出てくるような感じがした。しかし、くどくなく、飲みやすかった。

 

 

「これ美味しいですね。旨味がすごいですね」

 

「若いのに、お茶飲むのは珍しいね」と店主は少し嬉しそうだった。

 

 

「あの、イラストみたいなやつはなんなんですか」

 

「あれは、昔、うちが、アメリカにお茶を輸出していた時のポスターで、本物は博物館に保存されているんだけど、色を復元したものをコピーでもらったから飾ってるの」

 

「ええ、すごいですね!フォントとかもかっこいいですよね。狭山茶って昔から海外に輸出されたりしてるんですね」

 

不適な笑み。100年以上前のものらしい。

 

そのあとも何杯も茶を飲ませてもらった。

 

 

「これって、水出しとかでも美味しいですか」

 

「冷蔵庫でちょっと置いておいたら、美味しいのが出ますよ」

 

 

狭山茶には手揉みのコンテストがあって、それを何回優勝すると名人というのになれるんだけど、なんと、3グラム5000円とかするんだよ」

 

「5000円...3グラムって1回飲む時の茶葉の量くらいですよね。茶葉を揉むというのも奥深い世界なんですね...」

 

「よかったら広報誌あるから読んでみて」と茶がふぁさっと宙を舞う表紙の冊子をもらった。茶のこと、入間のこと、昔の文化のことなど、店主と話し込んでしまい、2時間弱、居座ってしまった。店主は、ゆくゆくは店で本も貸し出せるようにしたいのだという野望を最後に語った。茶屋かつ図書館なんて居心地の良さそうな空間ではないか。

 

 

茶をふたパック買って帰ることにした。沈んできたため、修理業社にジャッキアップしてもらったらしい入り口の戸を開けると、信じられないくらい暑い日差しが照り付けてきた。ぞっとしたが、早く帰って、水出しの茶を飲むぞと気合を入れ、だらだらと駅へ向かった。