今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

二泊三日、ソウルを食べる。辛くても、辛くなくても美味い韓国料理。

 

コロナにより、国境が閉鎖され、短くない月日が流れた。配偶者は、韓国のとあるスポーツ選手が好きなのだが、国境の閉鎖により、韓国に行きたい行きたい行きたいと長いこと呻きをあげていた。

 

各国で、徐々に、渡航条件が緩和されていき、韓国もコロナ前と同等の条件で入国できるようになったため、これはいよいよということで、五月、韓国へ行くことを決めた。配偶者は主に観戦を、僕は、韓国でうまいものをたくさん食べてやろうではないかという目的である。

 

ビュンと成田を飛び立ち、千切れた雲を眼下に望み、仁川国際空港に降り立った。空港ではBLACKPINKが迎えてくれた。シンプルでかっこいいウェルカムボードを見ると、とても洗練された国にやってきたのだという気がした。

 

今回はいわゆる新婚旅行である。結婚をして2年以上経過しているが、新婚さんいらっしゃい定義によると、新婚は3年目までということらしいので、これは新婚旅行なのだ......

 

 

食堂で、まずはやはりキムチがうまい

仮にも新婚旅行であるにもかかわらず、我々は空港を出てすぐ別行動となった。成田離婚ならぬ、仁川離婚、などということではない。空港で、両替だなんだとやっていたら、気がついたら、配偶者の応援しているスポーツ選手が出る試合のチケットの発券時刻が迫っており、配偶者は焦った表情を浮かべ、「ああ、やばい、ごめんちょっと行ってくるわ!」と言って、一人別路線の電車に乗り込んでいったのだ。

 

嵐のように配偶者は去っていき、一人残された僕は、配偶者の分の荷物も抱えホテルのチェックインへと向かった。1時間弱電車に乗って、乙支路4街駅で降りた。5月のことだったが、ソウルでは、電車でも、飲食店でも、路上でも、もうほとんどの人がマスクをしていなかった。日本ではその頃まだ、8割くらいの人はマスクをしているような印象だったので、こんなに近い国でも結構違うものなんだなと驚いた。

 

 

ホテルに向かう途中、市場を抜ける。まだ昼間なのだが、白熱灯が煌々と照り、干物や乾物が無機質に光っている。あるおっちゃんは、椅子にだらんと腰かけ、まどろみのなかにいて、ある女性は、虚空をぼーっと眺めていた。みな、一様に退屈そうである。

 

干物の匂いが充満していて、ぼくの腹をちょこちょこと刺激した。韓国旅行というのはとにかく女性がメインであり、空港にいる日本人観光客もかなり女性がおおかった。実際、韓国に行ったというと、男性でも楽しいのかと聞かれることがある。答えるとするのであれば、パンチの効いた食べ物をやたらといっぱい食べるが可能ということだと思う。

 

 

5分くらい歩くと、ホテルに到着した。ソウルのホテルも東京がそうであるように、相応に高騰していたのだが、そのホテルは一泊一人五千円だった。安いぞ!と勢いで予約したのだが、意外と清潔感があって、悪くなさそうであった。

 

チェックインしようとしたもののカウンターに誰もいない。カウンターに置いてあるベルをビビビビと三回鳴らすも、誰も現れることがなかった。薄暗いロビーで座って待つも、いつまで経っても、スタッフは現れないのだった。何というか、海外旅行にきたなと久しぶりの感覚があった。

 

スマホをいじりながら待っていると、配偶者から、チケットの入手に成功したという歓喜のLINEが届いた。うきうきの配偶者がご飯でも食べてきたら?との事だったので、僕はとりあえず、夕飯にはかなり早いが、なにか食べることにした。GoogleMapで調べ、만나손칼국수というカルグクスの店に行くことにした。

 

 

ホテルがある乙支路という地区は、小さな町工場がひしめいている。耳を澄ますとどこからかガチャンガチャンと機械音が聞こえてくる。こぢんまりした店に入ると、仕事終わりの作業着姿の大柄男が二人、背中を丸め、カルグクスを食べていた。街中の小さな食堂という感じで、細長い机が三つ並び、韓国特有の金属製の器がうず高く重ねられ静かな威圧感を放っていた。

 

 

女性の店主に、入口で勢いよく、韓国語でばーっと話しかけられた。カムサハムニダとアンニョンハセヨ、に加えて3、4の単語しかわからないのだが、焦りながら、かぎりある知識の中から、イルボン(日本)というと、店主は、あら、これは困ったねといった感じで、う〜んと悩み始めた。

 

引き続き、通じることのない韓国語で何かを説明してくれた。僕は、言語的、非言語的直感を鋭く働かせ、おそらく、カルグクスの付け合わせのマンドゥがないけれどいいかと言っているらしいと結論づけることにした。適当にOK!OK!と言うと、店主は「お、なんかよくわからないが通じたのかもしれないな」というような表情を見せ、厨房へ去っていった。

 

僕は、一仕事終わったぞ、と肩を撫で下ろした。座って水を飲む。韓国は全然近いのだが、なんだかんだ飛行機に乗ったりするとつかれるものだ。昼営業の波が去った後の静かな食堂で一人待っていると、キムチを出してくれた。キムチは余分な色がなく、妖艶に赤々としていた。韓国独特の金属の平たい箸で、キムチをつまむ。

 

 

キムチは、どちらかというとさっぱりドライな味わいで、塩気と辛味が良い感じにまとまっていた。これが驚くほどに美味しかった。噛むと香りが広がっていく。韓国にきたのだなあ。うまいキムチを食べると、ああ、米が食べたいなと思う。

 

韓国に来たのは、4回目くらいだが、このキムチが一番美味しい気がする。暇なので、Googleマップのレビューを読んでいたのだが、結構キムチについてのコメントが多く、どうやら、韓国人がたべてもこのキムチは美味しいものであるらしい。

 

いきなり、ラッキーだったな、うまいうまいと、キムチをパクパクと食べていた。すると、メインのカルグクスがやってきた。察知した通りだったようで、やはり、マンドゥがないようだった。素のうどんである。

 

 

席で僕は、じっとその麺を眺めた。箸をとり、麺を持ち上げてみた。そう、それは、とてつもない量であった。普通のうどんの3玉くらいはあると思われ、麺が器の中でゆらゆらと湯気を立ち上げ、不敵にこちらを見ているのである。ちょっとした二郎の趣である。店主が手をあれこれ動かし、食べ方を指南してくれる。どうやら、僕の直感によると、キムチを混ぜたりして、味を変えながら食べろと言っているように思われた。

 

さっぱりとしたスープに海苔が溶け込み少し甘い感じがした。キムチを入れるとそれが少しピシッとした。カルグクスなので麺はボヨンとしていて素麺に近い感じの食感だ。黙々と食べる。なんというか、すごい美味しいというものでもないけれど、体が休まる感じのする食べ物だ。

 

韓国人は徴兵があるので、男たちは総じて屈強である。二人の男たちはペースを落とすことなく、箸を一定の速度で動かし続け、巨大カルグクスをあっという間に食べ終えていた。僕は眼の前の巨大カルグクスと格闘したが、二玉分くらい食べたところでキツくなってきて、食べるのを断念してしまった。

 

ホテルに戻ると、スタッフがカウンターに戻ってきていたのでチェックインをして荷物をおろした。小さな部屋で小さなベッドに腰掛け、ああ、本当に久しぶりの海外だ!となにやら嬉しさが込み上げてきた。

 

韓国では、ビールとチキンを合わせて食べることをチメクと言うらしい

 

配偶者と合流するため、電車に乗り込んだ。湿気でむわっとしていた。ソウルの中央を流れる川、漢江を渡っていく。川面は薄く濁っている。雄大な川だ。韓国の、戦後経済の急発展を漢江の奇跡と呼ぶ。漢江は韓国の栄光とそれからこぼれ落ちる悲しみのようなものがどちらもねっとりと溶け込んでいるような気がした。

 

試合会場に着いた。配偶者が入口前でチケットを持ち待っていた。事前情報では天気が悪い可能性もありそうだったが、どうやら、今日は持ちこたえそうに見えた。

 

ヤンニョムチキンとビールを買って席につく。周りも同じような組み合わせで買っている人が多い。このチキンプラスビールの組み合わせをチメクと呼び、韓国民の腹を満たしているらしい。それは外すことのないユニバーサルな組み合わせである。

 

 

パクパクとチキンを食べビールを流し込む。ビールはTERAというやつで、軽い口当たりで健やかに飲めた。ごくごく飲んで、あっという間にソウルの夜が更けていくのだった。

 

夜にキンパの丸かじり

ということで、また、電車に乗り、ホテルへと帰った。駅では、男が泥酔して嘔吐したまま倒れていた。日本と同じような光景が韓国にもあるらしい。男たちが数人で介抱していたので大丈夫だとよいのだが。

 

 

帰りにコンビニに寄った。いかにも韓国っぽいコチュジャンぽさのあるキムパと酒を買って帰った。韓国ではコンビニにおにぎりのようにしてキンパが売っている。塩気がいい感じで、酒が進む。

 

 

朝、干し鱈のスープ、プゴクを

何回か韓国に来ているのだが、絶対に朝食べたいものがある。プゴクだ。日本語で言えば、干鱈のスースである。これがシンプルなのだが、なんとも良い出汁を感じさせ、朝の干からびた細胞に染み渡るのだ。

 

この店は、常に行列があり、一見、やたらと混んでいるように見えるのだが、みなスープをじゅじゅっとすするだけなので、回転が異様に早い。この日も、20人弱並んでいたが、10分ほどでなかに入ることができた。

 

 

席についてオーダーをすると、厨房でざっとよそわれて爆速で出てくる。きびきびとしたスタッフは細い通路をぶつからないように、高度な空間認知を持ち、最短経路で、プゴクに満たされた大きなステンレスのお椀を持ってくる。その様は、なにか空腹をより刺激する、儀式のようなものに見える。

 

 

手のひらを思いっきり開いたよりも大きな器にプゴクは入っている。日本で一人前でこんなに大きいものが出てくることはなかなかない気がする。幸せのサイズだ。プゴクは、干し鱈の出汁に塩気が加わり、豆腐、ネギ、とき卵が入っている。

 

湯気が塩気を伝える。金属の長いスプーンでプゴクをすする。もうなんというか、これを飲みに来たのだ!という味がする。そんなに奇天烈で珍しい味がするわけではないのだけど、つい飲みたくなってしまう簡潔な美味しさがある。

 

 

キムチやニラなどの付け合わせをご飯に合わせ、香味ののこる口の中にプゴクを流し込む。韓国料理といえば、辛いものや、肉などがパッと出てくるが、実は、スープが一番うまいのではないかと思う。韓国のスープはとにかくデカく、シンプルであるからこそ、普遍的なうまさがあるのだ。ああ、久しぶりに韓国に来れた。嬉しいなあと思う。旅先で、安心してうまいものが食べられる店が一軒でもあると、その街のことがぐっと好きになる気がする。

 

 

配偶者は、僕が新大久保で買ってきたフリーズドライジェネリックプゴクしか食べたことがなかったので、真のプゴクを食べ、何これ、うま、うま、と猛烈な勢いでスープをすすっていた。

 

 

大雨のソウル歴史博物館

大韓民国歴史博物館に行ってみたいなと思っていたので、そこへ行こうかと言って店を出た。

 

天気が徐々に怪しくなってきていた。光化門のあたりまできたところで、パラパラと雨が降ってきた。

 

 

雨脚が強くなったので駆け込むようにして、博物館に入り込んだ。呼吸を落ち着かせ、あたりを見回した。棚に刺さっているパンフレットを見ると、ここは、ソウル歴史博物館であるようだった。Googleマップに博物館と入れて、ぼんやり歩いていたら、全く違うところにたどり着いてしまっていたのである。韓国ではなく、ソウルという街についての歴史博物館であるようだった。

 

まあ、別にそれはそれでよいかと思い、見て回ることにした。なんと入場無料である。ちなみに、配偶者は、今日も、じゃ、チケット取りに行くんでと、途中で去っていった。

 

 

 

近代史のあたりでは、日本がいろいろと出てくる。かつての日本の行為は、一部ではソウルの街の近代化をもたらしたところもあるはあるのだが、その側面にしたって、様々に悪いことがあったのだというようなことが書いてあった。もっとけちょんけちょんに書かれているのだろうなと思っていたので、韓国側では、公にはこういう記述のされ方になるのかと学びがあった。

 

一番最後の展示はBTSだった。BTS、韓国の覇権をとった男たち......

 

一人になり、雨も強いので、喫茶店でゆっくりすることにした。地下鉄に乗り込む。

 

 

雨脚は強い。

 

 

卵がうかぶ韓国の伝統茶、サンファ茶

乙支路3街駅で降りる。乙支茶房という喫茶店に入った。

 

 

1985年に開業した、ソウルの中では比較的古い喫茶店らしい。店に入ると、老人が二人で茶をしばいていた。店主が韓国語で話しかけてくれるが、よくわからない。Googleマップの画像を出して、スマホ越しに茶を見せて、This one pleaseというとOKと言って、注文を受けてくれた。

 


この喫茶店は、数年前にBTSのPVに映ったらしく、それでBTSのファンが聖地巡礼に来ているという前情報を知っていた。なので、多少混んでいるのかなと思ったのだけど、むしろ空いていてとても快適だった。まあ、天気も悪いしなあ。

 

 

サンファ茶は韓国の伝統的な飲み物で、いろいろな漢方的なものが入っているらしい。カップを持ち上げると濃厚なシナモンの香りがした。口をつけると、背筋が伸びる甘さだ。飲み込むと、すっと漢方の香りが抜けていく。すこし柔らかくなったナッツも美味しい。雨の日に飲むのによい重みがある。

 

茶に浮かぶ卵黄を取り出して、口の中で割る。どろっとしたら卵黄が口の中に張り付き、甘い茶でそれを流しこむ。長い余韻があって、ため息をつきたくなる。良い飲み物だ。

 

配偶者からLINEが来た。天候悪化のため、試合自体が中止になったらしい。昼ごはんを一緒に食べようという話になって、合流することになった。ホテルに一回荷物を置きたいとのことだったので、ホテルの近くでご飯を食べることにした。

 

また、市場を歩いてホテルに向かう。配偶者が意気消沈でやってきた。

 

のせて、包んで、辛くてうまい、サムパム

 

 

ホテルの真裏にあったサムパム屋(송림우렁쌈밥)に。サムパムというのは、ご飯を野菜で包んで食べるという食べ物である。

 

 

やはり日本語は通じないので、またスマホで料理の写真を見せると、はいはい、OKといった感じで、サムパムを出してくれた。

 

 

すごい量だ!米は麦飯と五穀米のようなものに見える。中央の赤黒いものを米に混ぜて食べるのだと店主の女性が身振りで教えてくれた。

 

 

こんな感じである。そして、この赤いやつがかなり辛かった。しかし、辛いだけでなく、海鮮系の旨味があり、米に混ぜると確かにとても美味しかった。これだけで、茶碗三杯くらいは米を食べられると思った。

 

 

サニーレタスに載せる。包むと辛さが少し緩和され、食べやすくなった。そして、山盛りの野菜で辛いものを食べるというのは、正しく韓国的である。

 

 

「はあ、試合なくなっちゃったよ。これを見にきたのにな」

 

「まあ、昨日見られただけでもよかったんじゃない」

 

「そうだね、まあ、しかし、これは、近々またこなくちゃいけないな...夏にもう一回、来なくてはいけないな」と配偶者はオタク魂を燃やしていた。

 

韓国の卵料理ケランチムもあるので、これも一緒に包んでみる。ケランチムは出汁が効いていて辛い米に合わせると、味が多重化して、より良い感じだった。

 

配偶者は「ああ、試合なくなったなあ、はあ」と落ち込みながらも、「辛いけど美味しい!この卵はとくにいい!」と感情が忙しそうであった。五月でまだ寒かったので、辛さで体があったまってきた。

 

 

しかし、配偶者は試合の観戦という大仕事がなくなったのでやることがなくなってしまった。

 

「このあとどうしようか」と配偶者は嘆いた。

 

熱過ぎる汗蒸幕に入り、アカスリをし、薫製卵をたべる。

 

「また、別の博物館いってみるとかでもいいし、あと、アカスリを一回やってみたかったんだよね」

 

「アカスリか、寒いし、いいかもね」

 

ということで、スマホで適当にググって出てきた汗蒸幕というサウナ施設に行ってみることにした。この汗蒸幕というのは、韓国の伝統的な石窯のようなサウナらしい。どうも、観光客向けの施設であるらしく、相場のアカスリよりもやや高いような気がしたが、雨で移動も一苦労なので、まあ、いいかと、入ることにした。韓国はサウナは男女兼用で、貸し出される服を着て入る。

 

 

まず、シャワーを浴びて、風呂に浸かり、肌を柔らかくする。何分か浸かっていると小太りのおっちゃんがやってきて、そこにねそべれと言って、手術台のようなものに転がると、アカスリの布を手に巻き付けたおっちゃんが体をごしごしと擦るのだ。アカスリの布は、ヤスリのようなざらざら感で痛いと気持ちいいの間のような感じだ。

 

なすがまま体をゴシゴシと擦られ続けると垢がポロポロと落ちてきているらしいことがわかった。おっちゃんはペースを上げる。ごしごし磨かれ、湯船から湯を持ってきてばしゃーと体にかけられる。最後になぜか体をバチンバチンと叩かれて、アカスリは終了した。腕をさすると確かに肌がツルッとしていた。暴風雨のなかに突如放り出された可能ような印象のある、不思議な体験であった。

 

その後、貸し出されたサウナ着に着替えて、汗蒸幕に突入する。配偶者と合流かと思われたが、アカスリの時間がずれていて、結果、会うことはなかった。汗蒸幕に突入すると、ヨーロッパ系の男性と、インド系の女性と、韓国の若い男性が入っていた。その石窯のようなドームは、驚くべきほどに熱かった。まず、熱すぎて立っていると足の裏がめちゃくちゃに痛くなってくるのである。

 

 

ぼくは、あっつ、あっつと、阿波踊りのようなステップで足を焦がしながら中に進んだ。


とりあえず、石窯に入ったらすぐ腰をつけて、素肌を床につけないように体制をたもつ必要があった。中は意外と広く、カラッと乾燥していた。となりのヨーロッパ系の男性は尋常ならざる汗をかき、顔を真っ赤にしていた。大丈夫なのか...などと人の心配をしていたら、自らも、汗が体から噴出し、体感、3分ももたずに外に出た。

 

なんてことだと、ベンチで休んでいると、やたらと調子のいい、日本語の話せる受付のスタッフがやってきた。

 

これプレゼントと言って薫製卵をくれた。韓国のサウナでは、茹で卵を食べるのが習慣らしいのだ。塩分が抜けるから確かに良いのかもしれない。国によっていろいろな文化があっておもしろい。燻された香りがなかなかよかった。

 

 

真っ赤な韓国の伝統茶、五味子茶

土砂降りだ。運が悪い。喫茶店で、休憩をすることにした。耕仁美術館に併設されている伝統的な韓国の家屋のリノベ的な喫茶店である。

 

 

大きな窓が開けっぱなしになっていて、雨音が大きく聞こえる。

 

 

五味子茶を注文した。甘酸っぱくて、汗をかいた後に飲むと気持ちいい。体がぎゅっと冷える。クーラーが強かったのでちょっと寒いくらいだ。

 

 

明洞に移動して、配偶者の買い物につきあう。コスメである。専門店的なところに入ると、韓国人や日本人のみならず、世界中から女性が、買い物にきているようだった。韓国のコンテンツパワーを感じる。男たちは、入り口のところでくたびれた様子を隠さず、しゃがんでボーッとしたりしていてるようだった。せっかくなら、時間潰しように、インベーダーゲームの一つでも置いておいてくれたら、良いのにと思いながら、やはり、僕も店のすみで、邪魔にならないよう、壁に同化するかのような静けさで時が過ぎるのを待った。

 

 

甘辛たれで茹で鳥をどどんと1匹食べる

サムギョプサルでも食べるかと、Google マップで検索をして、出てきた店に行ってみたのだが、どうも満席で入れないようだった。腹も減っていたので、適当に近い店に入ろうかという話になり、100メートルくらい歩いたところ「なんか、この店よさそうな感じがする」となにかの直感を感じ、店をネットで調べた。そこは鳥の丸湯でが出てくる、サランバンカルグクスという店で、なかなか評判が良さそうだった。

 

なんとなく入ったのに、これが大正解だった。鳥まるまる一羽がどんとやってきた。なかなか気圧される。そして、定番のキムチ、鳥のスープに米である。

 

「いやあ、腹減ったね」僕は、結構歩いたので体がカロリーを求めていた。

 

「食べよ食べよ」配偶者も、目当ての品を入手することができずに、少し鬱屈した気持ちでいるらしく、そのストレスを解消したがっているようであった。

 

とりあえず、鳥をほぐし、塩につけて食べてみた。柔らかくてしっとりとしていて、口の中に旨味がぱーっと広がる。そして、キムチをかじり、米を食べる。そこから、ソジュを流し込む。米に合うものを食べると、落ち着いた気持ちになってしまうところに、みずからの東アジア性を感じる。

 

 

 

甘辛いタレもついていて、鳥にとてもよくあう。まあ、そりゃ美味しいだろうなというくみあわせだ。韓国では、一人でご飯を食べるという習慣があまりないらしく、最低注文ラインが二人分からだったりすることがある。この店は、仕事終わりの女性が一人でふらっと入ってきて、むんずと掴んでむしゃむしゃと鳥を食べていたりしていて、いい店だなと思った。韓国版孤独のグルメだ。

 

 

相変わらずすごい雨だ。

 

 

「コンビニに寄って帰ろうよ」と配偶者が言った。

 

「いいね、なんか、酒でも買って行こうか」

 

「アイス食べたいな」

 

ホテルで夜食、ソジュにカップ

ということで、いろいろ購入して帰った。狐のイラストがかっこいいノーシュガーのソジュがあったので買ってみた。あとはカップ麺とお茶、写真はないがアイスを買った。

 

 

「いやあ、試合がなくなってつらいな。せっかく来たのに」

 

「またくればいいじゃん。韓国なら土日でこれるよ。たぶん、もう少ししたら、航空券ももっと安くなってくると思うよ」

 

「たしかに、そうだね」と言って配偶者はアイスをかじり始めた。

 

湯を沸かして、カップ麺を開ける。ソジュを開けて、あ、コップがないと気がつき、ボトルのままで飲む。結構おいしい気がしたのだが、どんな味だったのかいまいち記憶がない。確かにすっきりしていた気がする。

 

 

カップ麺はじわっとした辛さだった。苦手な人だと食べられないかもしれないが個人的にはちょうど良いくらいの辛さだった。こういうなんでもないものを食べてけっこう美味しいというのが、文化の強さだ。

 

ソウル歴史博物館の図録を読む。なんと、この分厚さのものを各言語で無料で配布しているのだ。あまりにも気前がよい。カラーでなかなかの読み物である。立派なことだなあと思いながら少しめくって、眠りについた。

 

 

朝、広蔵市場で、キンパとトッポキ

朝ごはんを食べに広蔵市場に向かった。朝からすごい活気である。

 

 

朝一くらいの時間だったので、まだ席がわりと空いていた。僕たちが座ってしばらくするとほとんどの席が埋まってしまった。目の前で、でかいトッポキがぽこぽこと煮えたち、よい匂いを立ち上げていた。これは食べるしかないだろう。

 

 

声をかけると若いお兄さんがトッポキをよそってくれる。甘めの味付けでよいかんじだ。オムクという練り物も味が染みていて美味しい。

 

 

キンパは、ごま油で一本一本が鈍く光っていた。たくわんと野菜が入ったシンプルなもので、ソースは辛子ベースでピリピリしていて、朝ちょっとつまむのに向いているなと思った。

 

「なにこれ、うま!」と言って、配偶者はもりもりとキンパを食べていた。このソースがなかなか癖になる感じで、気がつくとあっという間になくなっていた。おでんの出汁もくれたので、スープ代わりに飲む。日本のものより、動物性の旨味がある気がする。日本と韓国の食文化は、似ていて微妙に違うのでとてもおもしろい。

 

 

昼過ぎくらいの飛行機だったので、そろそろ帰る準備をしなくてはならない。ホテルに向かうかと言って歩き出した。

 

 

市場を歩く。市場にはさまざまな音が響いている。それぞれがなかなかに蠱惑的に聞こえるのだ。じゅじゅじゅじゅじゅという音がどこからか聞こえてきた。なんだろうなとのぞいてみると、お好み焼きのようなものが順次揚げられ、揚げ台の脇に積み上げられていた。

 

 

ピンデトックという韓国のお好み焼きのようなものらしい。

 

「なんかおいしそうだね」ぼくはもう少し食べたい気持ちだった。

 

「買う?」

 

「でも結構食べたよね」

 

「そうだね」

 

「買おうか、で、ホテルで食べようか」

 

といった話し合いの結果、それは、ホテルに持ち帰られた。チヂミに似ているが、小麦ではなく緑豆を潰したもので作られているらしい。小袋に別途、甘酸っぱいタレがついている。それをほどいて、ピンデトックをつけて食べる。しっとりとしてふわふわだ。玉ねぎの甘みがいい感じで、食べをつけると酸味で少ししまったような味わいになり結構おいしい。

 

一人旅をすることが多いが、二人だと、胃袋が二倍になるのでいろいろなものを食べられてよい。

 

 

コロナが広がって、三年ぶりの海外だった。国内も楽しいところはたくさんあるけれど、やっぱり、国外に出てくると、なんとも言えない開放感がある。

 

ソウル駅に行くと、空港でもないのに、飛行機のチェックインができるカウンターがあり、荷物を預けることができた。ソウルに来たのは3回目だけれど、昔からこうだったんだろうか。最近できたシステムなのだろうか。とにかく身軽に移動できるようになりとても便利だった。

 

 

ジャージャー麺で、さらば、ソウル

最後に、空港で、じゃーじゃー麺を食べた。ずっと食べてみたいなと思っていたのだが、ソウル市内で機会がなかったので、お腹いっぱいなのに、ついつい食べてしまった。この肉味噌がなんというか洋風のデミグラスソースみたいな味がして驚いた。ここが空港だから、ユニバーサルな感じの味付けになっているのだろうか。それとも、もともとこういう感じの味付けなのだろうか。次の韓国の課題はジャージャー麺の味は本当などんなものなのかを解決するところから始まりそうだ。